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ものづくり補助金の審査項目を把握し採択を目指そう(1)

ものづくり補助金の審査項目を把握し採択を目指そう(1)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は、中小企業等が革新的なサービスや試作品を開発したり、生産プロセスを改善したりするために、設備投資等をサポートする補助金です。

ものづくり補助金に応募申請する場合は、公募要領を確認し申請に必要な書類を作成します。よって、必ず最新の公募要領を確認してください。2023年4月時点では、第14次の公募要領が最新版となります。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/14th/reiwakoubo_14_20230214.pdf

この公募要領で説明されている審査項目に沿って事業計画書の審査が行われます。審査項目に関連する記載がなければ、良い点数を獲得できず不採択となるため、事業計画書には、審査項目の内容を記載する必要があります。

事業計画書に審査項目の内容を記載することは、採択獲得のための大変重要なポイント
です。必ず審査項目の内容を確認してください。現時点での最新版の公募要領(14次締切分)では、以下の7つの審査項目があります。

  1. 補助対象事業としての適格性
  2. 技術面
  3. 事業化面
  4. 政策面
  5. 炭素生産性向上の取組等の妥当性(グリーン枠のみ)
  6. グローバル市場開拓の取組等の妥当性(グローバル市場開拓枠のみ)
  7. 大幅な賃上げに取り組むための事業計画の妥当性

本記事では、審査項目の1と2について説明いたします。

1.補助対象事業としての適格性

この適格性は、「補助対象事業の申請要件、申請枠及び補助率等」を満たしているか、が問われています。
例えば、「補助対象事業の申請要件」として、補助事業実施期間内に、発注・納入・検収・支払等の全ての事業の手続きが完了することや、補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること等が示されており、また、基本要件として、以下をすべて満たす3~5年の事業計画の策定が必要とされています。

<基本要件>
• 事業計画期間にて、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
• 事業計画期間にて、事業場内最低賃金を、毎年地域別最低賃金+30円以上の水準とする
• 事業計画期間にて、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

また、「申請枠」は、通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠及びグローバル市場開拓枠が設けられており、それらのいずれかに該当する必要があり、枠によって補助金額が変わります。なお、申請後の申請枠の変更はできません。「補助率」は、枠・条件によって1/2又は2/3となります。その他にも枠毎に要件があり、その要件を満たす必要があります。

 

2.技術面

技術面では、以下の4つの内容について審査が行われます。

①新製品・新サービスの革新的な開発となっているか。「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」又は「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取組であるか。
②試作品・サービスモデル等の開発における課題が明確になっているか。補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。
③課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。
④補助事業実施のための技術的能力が備わっているか。

①技術面の1つ目は、補助事業の具体的取組みが新製品・新サービスの革新的な開発であり、既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含むもの)となっているかどうかです。革新的とは、自社にとって新たなチャレンジであり、業界や自社商圏にとって新しい取り組みと考えられます。例えば、公募要領の概要に記載されている、以下の経営革新の類型で示される新商品・新サービスであれば、革新的な開発と言えるでしょう。この審査項目は、ものづくり補助金の趣旨と密接に結びつく重要で本質的な論点であり、この革新性をしっかりと説明することが、採択可否の重要なポイントとなります。

経営革新の4類系

また、補助事業が「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」又は「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取組みであることを示す必要があります。

「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」(経済産業省)
「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」(中小企業庁)

このガイドラインと指針に沿っているかどうかも重要な論点です。電子申請を行う際に事業分野を選択しますが(下図)、これにチェックするだけでは説明は不十分です。項目になぜ該当するかを事業計画書で明確に説明することが採択可否の重要なポイントとなります。

事業分野

案する事業が「新商品(試作品)開発」または「新たな生産方式の導入」(上図A)の場合は、「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」で示された各技術分野の高度化目標に沿っていることを、事業計画書で説明します。

提案する事業が「新役務(サービス)の開発」または「新たな提供方式の導入」(上図B)の場合は、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に示された(1)~(10)の手法(例:新規顧客層への展開、商圏の拡大等)のいずれに合致するかやその理由について、事業計画書で説明します。このガイドラインでは、生産性の向上のために「誰に」、「何のサービス」を、「どのように」提供するのかを再確認したうえで、それを実現するための手法を示しています。

付加価値・効率向上の手法

②技術面の2つ目では、試作品・サービスモデル等の開発の課題、及び補助事業の目標に対する達成度の考え方が問われています。これを検討する際に参考になる資料として、事業再構築補助金ホームページで公開されている「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」があります。下図は、その中に示されている「ありたい姿と現状のギャップ」です。ギャップは、問題でありその時点での状態を示しているので、そのギャップを解決するためのアクションとして、それの対応方針としての「課題(技術面の2つ目)」を設定し、具体的な対応手順や方法を「解決策(技術面の3つ目)」として事業計画書に示します。ものづくり補助金では、課題の解決のアクションに必要な設備投資等を行います。

あるべき姿

補助事業の「目標」に対する「達成度の考え方」については、目標を具体的な内容・数値で表現することが重要です。その目標に対する達成度の考え方を明確にするため、どのような状況・数値となったら達成するのか、その基準を明確に設定します。必ずしも高い目標が求められているのではなく、あくまで達成すべき具体的な目標と、達成度の考え方として、なぜその目標値なのか、適切な指標になっているかを客観的に説明することが重要なポイントとなります。

③技術面の3つ目は、課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるかが問われています。課題の解決方法は、技術面の2つ目で設定した課題を補助事業期間内に解決するための「自社で実行可能な手順と手法」を明確に述べる必要があります。この解決方法は、補助対象経費と関連付けて記載すると、補助金の趣旨(解決策に対して経費を補助する制度)に一致し全体の一貫性がとれます。例えば、①解決方法として設備を導入するのであれば、対象経費は機械装置費とし、②特許等知的財産権の取得であれば、技術導入費とする等です。また、その解決方法の妥当性は、解決方法が客観的にも実情に即し現実的か、導入する設備のスペックが過大又は過少でなく適切かなどの観点で説明すると良いでしょう。また、そこに優位性が見込まれることや、これまでの自社・他社と比べてどのような点が優れているのか、などの点も丁寧に記載しましょう。この審査項目で問われている「課題の解決方法」、「妥当性」、「優位性」について実直に対応・解説していくことが、採択の可能性を高めることに繋がります。

④技術面の4つ目は、補助事業実施のための技術的能力が備わっているかです。つまり、技術面での実現可能性を問われています。革新的なサービス・製品を実現するために設備投資を行った場合に、その設備を使いこなせる人材(人)がいることを説明します。

この技術面の審査項目①~④は、審査項目の中で最も重要で本質的な項目であり、事業計画書でもアピールできる箇所でもあります。明確な課題に対する解決策として革新的な開発を行い、客観的な達成指標とともに目標を設定していること、妥当性や優位性、また補助事業を実施する技術的能力を有しているなどの点を、事業計画書に漏れなく確実に記載することで、採択率が格段に高まります。次回は、審査項目の(3)事業化面を説明します。

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