前回までは、公募要領(15次締切分)の審査項目の(1)~(7)の中で、(1)補助対象事業としての適格性と(2)技術面、(3)事業化面について説明をしました。今回は、審査項目の(4)政策面について説明します。
<公募要領(15次締切分)の審査項目>
(1)補助対象事業としての適格性
(2)技術面
(3)事業化面
(4)政策面
(5)炭素生産性向上の取組等の妥当性(グリーン枠のみ)
(6)グローバル市場開拓の取組等の妥当性(グローバル市場開拓枠のみ)
(7)大幅な賃上げに取り組むための事業計画の妥当性(大幅な賃上げに係る補助上限額引上の特例のみ)
政策面では、以下の5つの内容について審査が行われます。政策面は、補助事業を実施した成果が、自社の範囲にとどまらず社会や地域経済等にどのような影響を及ぼすのか、国の政策と合致しているかがポイントとなります。この5つの項目は、事業再構築補助金の政策面(P45)とほぼ同じ内容ですので、事業再構築補助金の説明資料等で内容を把握するとよいでしょう。
① 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
② ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
③ 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。また、事業承継を契機として新しい取組を行うなど経営資源の有効活用が期待できるか。
④ 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか。
⑤ ウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済構造の転換、事業環境の変化に対応する投資内容であるか。また、成長と分配の好循環を実現させるために、有効な投資内容となっているか。
政策面の1つ目は、以下の内容です(下図参照)。
① 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。 |
まず、「地域の特性を活かして」とあるので、自社が活動する地域の資源等を活用して付加価値(営業利益+減価償却費+人件費)を向上させる必要があります。そして、自社を取り巻く地域の事業者等や自社の従業員の雇用、売上拡大等の経済的波及効果がどうなるのか、その結果として地域の経済成長にどう繋がるのかを記載します。
地域経済の牽引については、15次公募要領に掲載されている「地域未来牽引企業」の選定実施要領の記載(下図参照)が参考になります。この要領を参考に「補助事業による設備投資を行うことで、○○地域の特産品製造の生産性が向上して売上が拡大し、自社の取引先等の事業者の業績拡大や従業員の新たな雇用も期待できる」などといった記載ができれば良いです。
「地域未来牽引企業」選定実施要領(令和2年2月28日 20200225地第3号)より一部抜粋
政策面の2つ目は、以下の内容です(下図参照)。
② ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。 |
「ニッチ分野」は、大企業が対象としない小さな市場(隙間)が対象です。「適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化」は、自社の強みを例に挙げて競合企業と差別化を図っていることを示します。「グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性」は、将来的に自社製品・サービスが直接または間接的に海外市場に展開する可能性がある場合は、その旨を記載しましょう。
政策面の3つ目は、以下の内容です(下図参照)。
③ 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。また、事業承継を契機として新しい取組を行うなど経営資源の有効活用が期待できるか。 |
自社単独では解決が難しい課題を、複数の事業者と連携して取り組むことを記載します。また、自社と複数の事業者が共同で製品開発を行うことで、売上拡大や新規雇用等の経済的波及効果が将来的に期待できることを説明します。「事業承継を契機として新しい取組を行うなど経営資源の有効活用が期待できるか」については、経営者が事業承継を検討する年齢等であれば、事業承継の計画にも触れてシナジーを活用した新たな取り組み等を記載できます。
政策面の4つ目は、以下の内容です(下図参照)。
④ 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国のイノベーションを牽引し得るか。 |
「先端的なデジタル技術の活用」とは、AI、IoT、XR、ドローン、ビッグデータが該当します。「事業再構築補助金虎の巻 事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック 中小企業庁(P114)」が参考になります。「低炭素技術」は、二酸化炭素の排出を抑えるための技術のことです。「経済社会にとって特に重要な技術」の具体的事例は示されておりませんが、自社の技術が経済社会にどのような影響を与えうるかを考えましょう。そして、「デジタル技術」「低炭素技術」「環境配慮事業」「特に重要な技術」「新たなビジネスモデル」等を通じて、日本のイノベーションを牽引していく可能性を記載します。
政策面の5つ目は、以下の内容です(下図参照)。
⑤ ウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済構造の転換、事業環境の変化に対応する投資内容であるか。また、成長と分配の好循環を実現させるために、有効な投資内容となっているか。 |
ここでは投資内容が問われています。新型コロナウイルス感染症の影響により生じた事業環境の変更に対応するためにどのような投資を行うのか、新たな市場へのアプローチについて記載します。「成長と分配の好循環」は、現岸田政権の主要政策「新しい資本主義」のサブタイトルであり、その意味は、成長の果実を従業員に分配し、そして未来への投資である賃上げが原動力となって更なる成長につながる好循環を作ることです。このように、自社で得た利益を適切に従業員に分配する仕組みを記載します。
審査項目の(4)政策面を説明しました。政策面の審査項目は、説明文の章量が多いですが、一文ずつ確認し、記載内容を考えましょう。政策面の記載がなければ、審査項目の政策面の加点はありませんので、しっかり記載するようにしてください。
これまで説明した審査項目(1)~(4)を的確に漏れなく記載するには相当の時間的余裕と客観的な視点での考察が重要となります。当プロコン補助金では、ものづくり補助金などの補助金活用をサポートしています。高い専門性を持つコンサルタントが、実務に沿った実効性の高い事業計画の作成をご支援します。ぜひプロコン補助金にお問い合わせください。