ものづくり補助金の公募要領の掲載が17次は2023年の12月下旬に、18次は2024年の1月下旬にありました。
その公募要領の加点項目を確認すると、合計で19個と過去最多となっています。これまでの対象項目に加え、いくつかの項目が新たに追加されて増加しています。そのため申請者にとって、どの加点項目を優先して取得すれば良いかが非常にわかりづらくなっています。
そこで、本記事ではものづくり補助金17次、18次のものづくり補助金の全ての加点項目の概要と取得のしやすさなどについて解説します。
取りやすさ: △
取得までの期間:2~3カ月
取得にかかる費用:なし
経営革新計画とは、中小企業が新事業活動を行い、その経営の相当程度の向上を図ることに関する計画のことです。
計画書のボリュームは25~30ページと多く、審査から都道府県知事等の承認を受けるまでに2~3ヶ月程度を要します。そのため、優先順位は下がるでしょう。
参考:経営革新計画
記事「ものづくり補助金の採択には加点項目を押さえよう(1)」
取りみやすさ: 〇
取得までの期間:なし
取得にかかる費用:なし
創業・第2創業の対象者であれば、申請時に必要書類(開業届*又は履歴事項全部証明書)を提出により加点となります。そのため、対象者の方は、必要書類を準備の上、確実に加点を取得するようにしましょう。
取りやすさ: ◎
取得までの期間:登録から公開まで6~7日営業日
取得にかかる費用:なし
パートナーシップ構築宣言とは、取引先などとの連携・共存共栄となるパートナーシップの構築を「発注社」側の立場から宣言するものです。自社の取り組みを代表者名で「パートナーシップ構築宣言」として登録します。
この宣言はWord1~2ページ程度で書類作成の負荷は低めです。そのため比較的取り組みやすい加点項目です。申請にあたっては類似業種の宣言を参考にすると良いでしょう。また宣言の登録から公開まで7営業日程度と短期間で取得可能です。
参考:「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト (biz-partnership.jp)
取りやすさ: 〇
取得までの期間:なし
取得にかかる費用:なし
対象であれば申請時に必要書類(「再生事業者」に係る確認書)を提出すれば加点となります。そのため、対象者の方は、必要書類を準備の上、確実に加点を取得するようにしましょう。
取りやすさ: 〇
取得までの期間:3~4カ月程度
取得にかかる費用:なし
DX認定事業者とは、DX推進の準備が整っている事業者であることを国が認定する制度です。認定を受けると、公表されるため社会的認知度と信頼が高まる、税制面での優遇を受けられるなどのメリットがあります。認定を受けるためには、公開されている「申請要項」を確認し、「認定申請書」「申請チェックシート」を作成して提出しましょう。書類作成の難易度はそれほど高くありません。また審査に時間が掛かりますが、通年受け付けていますので、来年度以降に向けて取得を検討してもよいかもしれません。
参考:DX推進ポータル
取りやすさ: △
取得までの期間:導入するツールによる
取得にかかる費用:有償(導入するツールによる)
サイバーセキュリティお助けサービスとは、IPA(情報処理推進機構)が運営しているセキュリティ支援サービスです。すなわち、中小企業のサイバーセキュリティ対策に必要なサービスをワンパッケージで安価に提供するものです。「サイバーセキュリティお助け隊サービス」として登録されたセキュリティツールを導入すれば加点対象となります。そのため取組みやすいですが、費用がかかるデメリットがあります。よって費用をかけても導入したい登録ツールがあれば検討する価値はあります。
また、ツールの導入スケジュールはサービスごとに異なります。そのため、ものづくり補助金の申請までに間に合うかを導入するツールのサービス提供者に確認してください。
取りやすさ: △
取得までの期間:年に1回申請受付(8-10月)通常翌年3月に認定
取得にかかる費用:中小規模法人は申請費用15,000円
健康経営優良法人とは、日本健康会議によって「優良な健康経営を実践している企業である」と認定された法人を指します。中小法人部門の認定を受けるためには、下記プロセスが必要です。
「所属する保険者が実施する「健康宣言」に参加する」
「自社の取組の状況を確認して、認定基準に該当する具体的な取り組みについて申請書に記載する」
「保険者経由で申請する」
「認定審査を受ける」
「日本健康会議で認定を受ける」
また認定基準としては下記の5項目について審査が行われます。
「経営理念(経営者の自覚)」
「組織体制」
「制度・施策実行」
「評価・改善」
「法令遵守・リスクマネジメント」
加えて、企業だけなく、労働者と一体となって取り組む必要のある要件も多くあります。そのため自社のみで申請を行うには難易度が高いです。申請の際には専門家への相談も検討しましょう。
取りやすさ: △
取得までの期間:申請から認証を取得まで1~2カ月程度(早い場合)
取得にかかる費用:数十万円程度
技術情報管理認証制度とは、企業の情報セキュリティ対策を、国の認定を受けた認証機関が国が策定した基準に基づいて審査・認証する制度です。中小企業の中でも一定の規模(人数、資本金等)以上でないと、情報セキュリティの体制構築の工数・コストや管理コストが高く、認証取得は難しいです。そのため補助金の加点のためだけに取得するは費用対効果の面でお勧めできません。しかし情報セキュリティ体制を強化する予定の企業であれば、認証取得に取り組んでも良いでしょう。
参考:技術情報管理認証制度
取りやすさ: ×
取得までの期間:不明
取得にかかる費用:不明
J-Startupとは、実績あるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者等の外部有識者からの推薦に基づき、潜在力のある企業を選定し、政府機関と民間の「J-Startup Supporters」が集中支援を行うプログラムです。
またJ-Startup地域版は、各地域の事務局が地域に根ざした有望スタートアップを支援するプログラムです。
公募時期が不定期であり、要件は公募期間中のみ公開されるため、詳細をお伝えすることができません。
※2024年2月8日現在
取りやすさ: 〇
取得までの期間:7営業日
取得にかかる費用:なし
自社ではなく取引先の「パートナーシップ構築宣言」が審査対象となります。取引先の宣言に「グリーン化の取組」の記載があれば加点の対象となります。宣言の作成負荷は大きくはないものの取引先の宣言を要するため、ハードルが高いと言えます。よって協力を得られる取引先でグリーン化の取組みが可能であれば検討する価値があります。なお、パートナーシップ構築宣言の登録から公開までは7営業日程度です。
参考:パートナーシップ構築宣言
取りやすさ: 〇
取得までの期間:事業者登録まで1週間程度
取得にかかる費用:なし(登録無料)
新規輸出1万者支援プログラムは、輸出を検討している事業者や輸出を拡大したい事業者に対して、事業計画の策定や商品開発から販路開拓まで一気通貫で支援します。事業者は、登録後にジェトロのカウンセリング等を受ける必要がありますが、事業者登録は無料であり、製品・サービスの輸出を考慮している事業者は、積極的に取り組んでみてもよいでしょう。
取りやすさ:×
取得までの期間:登録まで5~6か月程度
取得にかかる費用:50万円~100万円程度の審査費用が必要
Jクレジット制度は、企業や自治体などの取り組みによって排出削減・吸収された温室効果ガスをクレジットとして国が認証し、購入・売却できるようにした制度です。認証を受けるには、下記のステップが必要となります。
「該当事業の実施・計画」
「制度事務局へ相談」
「支援内容・支援対象の確認」
「プロジェクトの登録」
「モニタリングの実施」
「報告書の作成・クレジットの認証」
登録手続きとJクレジット発行時にそれぞれ必要書類の作成と審査を受ける必要があり、審査費用の負担も大きいため、補助金の加点のみを主目的として取得するのはおすすめできません。
参考:J-クレジット制度
取りやすさ: △
取得までの期間:2024年2月29日までに参画申込み
取得にかかる費用:なし(無料)
GXリーグとは、2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取組を行う企業群を官・学と共に協働する場です。
上記のGXリーグに参画したうえで、過去のCO2排出量の算出、削減目標の設定と削減の実施が必要です。加えて、削減取組みの公表、実施義務があるため取組みのハードルが高い加点項目です。そのため補助金の加点のみを主目的としての参画はお勧めしません。
なお、過去の排出実績の算出や、取組み後の削減目標の設定などが必要で、申し込みに多くの作業コストを要します。また2024年2月29日までに参画申込みが必要です。
参考:GXリーグ
取りやすさ: △
取得までの期間:CFP算定まで3か月~1年程度
取得にかかる費用:なし(無料)
CFPは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量をCO2排出量に換算し、製品に表示された数値もしくはそれを表示する仕組みです。よって新たにCFPを算定するには、多大な工数等が必要であり、難易度はかなり高いでしょう。そのため、すでにCFPに取り組んでいる企業以外はこの加点項目の取得はお勧めしません。
取りやすさ: 〇
取得までの期間:計画書の作成:数時間~1日程度、申請~取得まで:1~3週間程度
取得にかかる費用:なし(無料)
事業継続力強化計画認定制度とは、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が「事業継続力強化計画」として認定する制度です。計画書の作成に作成の手間が掛かかりますが、手引きを元に作成すれば誰でも作成ができます。また、申請すれば確実に認定されるため、加点ポイントの取得にはお勧めです。
参考:事業継続力強化計画
加点項目④-1 賃上げ加点
取りやすさ: 〇
取得までの期間:なし
取得にかかる費用:賃上げによる固定費の増加を考慮
賃上げ加点とは、下記要件を満たした計画に加点するものです。
①給与支給総額を年平均成長率平均3%以上または6%以上の増加
②事業場内最低賃金を一定水準以上に増加
上記の①については、成長率の計算のベースが1人あたりの平均給与額でなく給与支給総額であるため、元々従業員数を増やす予定の企業や、②については、従業員が全員正社員であるケースなど、事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりある程度高い企業は、比較的取り組みやすい項目と言えるでしょう。ただし、条件未達の場合は補助金の返還要件に沿った返還義務が生じますので、加点の要件を達成できるかどうかを、よく検討させることお勧めします。
取りやすさ: △
取得までの期間:なし
取得にかかる費用:社会保険加入に掛かる費用
この加点項目は、従業員数が51名~100名の中小企業を対象としています。そのため従業員数が50名以下、もしくは101名以上の中小企業は対象外となります。
被用者保険の適用拡大とは、要件に該当する企業に対し、正社員だけでなく一定の要件を満たすパートやアルバイトなどの短時間労働者に対しても社会保険への加入を義務化させるというものです。この被用者保険の適用拡大は、これまで従業員数が多い企業から段階的に適用されてきました。新たに2024年10月からは従業員数が51名~100名の企業も対象となります。
今回の加点項目は、従業員数が51名~100名の企業が、この被用者保険の適用拡大に先立ち、対象となる短時間労働者を社会保険への加入させると加点されるというものです。よって対象である従業員数が51名~100名の企業は、先立って対象となる短期労働者を社会保険に加入させることによる固定費の増額などを考慮しましょう。そのうえで取り組むかどうかを検討するとよいでしょう。
取りやすさ: ◎
取得までの期間:7営業日程度(一般事業主行動計画の公表)
取得にかかる費用:なし(無料)
「えるぼし認定」は女性の活躍推進、「くるみん認定」は仕事と育児の両立を推進する企業を認定するものです。また「一般事業主行動計画」は認定の前段階で、自社の取組みを行動計画として示したものです。
えるぼし加点、くるみん加点のいずれも、従業員100人以下の企業であれば取組みやすい加点項目です。従業員数100人以下の企業は「一般事業主行動計画」の公表で加点となります。それぞれ下記のデータベースに登録します。
えるぼし加点:「女性の活躍推進企業データベース」
くるみん加点:「両立支援のひろば」
上記の行動計画はWord1~2ページ程度です。作成にあたっては類似業種の行動計画を参考にすると良いでしょう。
一方で、従業員数101人以上の企業にはややハードルが高い加点項目です。それは従業員数101人以上の企業では、えるぼし加点は「えるぼし認定」、くるみん加点は「くるみん認定」が必要となるためです。その認定には一定期間の取組み成果を提示し、要件を満たす必要があります。「えるぼし認定」は最短で4カ月程度、「くるみん認定」は最短で2年程度を要します。加えて実施義務があるため取組みのハードルはやや高いです。
なお、「えるぼし加点」、「くるみん加点」は、それぞれ独立して加点されます。そのため両方に申請すると加点で有利となります。
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