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【2024年】事業再構築補助金サプライチェーン強靱化枠について

【2024年】事業再構築補助金サプライチェーン強化枠について

2024年4月23日に事業再構築補助金の第12回公募が始まり、既存の事業類型の見直しが行われ、今なおコロナの影響を受ける事業者への支援及びポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援が重点化されました。「サプライチェーン強靱化枠」は、第10回公募(2023年3月~6月)に新設され、第11回(2023年3月~6月)では公募がなく、第12回で約1年ぶりに公募が開始されました。この枠は、国内サプライチェーン及び地域産業の活性化の取組みを対象とし、ポストコロナに対応した事業再構築を重点的に支援するものです。この記事では、この事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠の(1)~(6)について説明を行います。

 

(1)サプライチェーン強靱化枠の概要

「サプライチェーン強靱化枠」を含む事業再構築補助金事業は、ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。そのうち「サプライチェーン強靱化枠」は、国内サプライチェーン及び地域産業の活性化に取り組む事業者を支援するもので、その概要を以下に示します。対象となる事業者の業種は、製造業のみとなります。

概要 ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組みを行う中小企業等に対する支援
補助金額 1,000万円 ~ 5億円以内  ※建物費がない場合は3億円以内
補助率 中小企業者等 1/2、中堅企業等 1/3
補助事業実施期間 交付決定日~28か月以内 (ただし、補助金交付候補者の採択発表日から30か月後の日まで)
補助対象経費 建物費、機械装置・システム構築費

サプライチェーン強靱化枠は、「国内回帰」と「地域サプライチェーン維持・強靱化」の類型があります。いずれの類型も以下のそれぞれ3つの要件を満たす事業計画であることが必要で、さらに両類型ともに、「導入設備の先進性要件」と「新事業売上高10%等要件」を満たす必要があります。


(出典:事業再構築補助金の公募要領(サプライチェーン強靱化枠)

「国内回帰」は、海外生産拠点の閉鎖は要件になく、海外生産拠点は維持のまま、国内の生産拠点を整備することができます。また、取引先から要請を受け、取引先が海外で調達している製品を製造する生産拠点を国内で整備する場合、一定の要件を満たせば特例的に対象となります。

「地域のサプライチェーン維持・強靱化」で対象となる製品は、その供給に不足が生じ、又は、生ずるおそれのある製品で、事業を行う中小企業等が地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠である場合です。必要不可欠であることを示すため、本事業で取り組む分野は、市町村の策定する計画(地域経済牽引事業の促進に関する基本的な計画)、又は地方公共団体(都道府県や市区町村を統括する各行政機関)が独自に策定する産業戦略において当該地域の重要産業として位置づけられている必要があります。

両類型に求められる「新事業売上高10%等要件」は、3~5年間の事業計画期間終了後、事業により製造する製品の売上高が総売上高の10%以上となることが求められます。しかし、直近の事業年度の決算において、売上高が10億円以上であり、かつ、事業再構築を行う事業部門の売上高が3億円以上である場合には、事業計画期間終了後、事業により製造する製品の売上高が当該事業部門の売上高の10%以上を占めることが見込まれる場合でも要件を満たします。

 

(2)サプライチェーン強靱化枠の補助対象事業の要件

サプライチェーン強靱化枠における補助対象事業の要件を以下に示します。サプライチェーン強靱化枠の対象となる事業は、他の枠よりも厳しい要件が設定され、③【付加価値額要件】は、付加価値額の年平均成長率 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること④取引先からの具体的な国内生産(増産)要請があること等、高い成長性・実現可能性が求められています。

① 事業再構築指針に示す「事業再構築(国内回帰又は地域サプライチェーン維持・強靱化)」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】

② 事業計画について金融機関等又は認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。ただし、補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること。【金融機関要件】

③ 補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年平均成長率 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること【付加価値額要件】

取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)【国内増産要請要件】

⑤ 取り組む事業が、過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が 10%以上拡大する業種・業態に属していること(ただし製造業に限る)【市場拡大要件】

⑥ 下記の要件をいずれも満たしていること【デジタル要件】

(1) 経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。

(2) IPA が実施する「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行っていること。

⑦ 交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30 円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30 円以上高くなる雇用計画を示すこと。【事業場内最低賃金要件】

⑧ 事業終了後 3~5 年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させること【給与総額増加要件】

⑨ 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること【パートナーシップ構築宣言要件】

 

(3)サプライチェーン強靱化枠のスケジュール

・第12回公募のスケジュールは以下の通りです(2024年5月1日現在)。

公募開始:令和6年4月23日(火)
申請受付:調整中
応募締切:令和6年7月26日(金)18:00
補助金交付候補者の採択発表:令和6年10月下旬~11月上旬頃(予定)

・サプライチェーン強靱化枠の補助事業には、工場の建設等、他の事業よりも時間を要する投資が予想されることから、補助事業実施期間は交付決定日~28か月以内(ただし、採択発表から30か月後の日まで)と、他の枠(交付決定日~14か月以内)に比べ長く設定されています。補助事業終了後、フォローアップ期間として5年間は事業化状況報告が毎年必要となります。

スケジュール
(出典:事業再構築補助金の公募要領(サプライチェーン強靱化枠)

・第11回公募まで実施された事前着手制度は“原則廃止”となります。ただし、経過措置として、第10回公募でサプライチェーン強靱化枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募でサプライチェーン強靱化枠に申請し、事前着手届出が受理された場合は事前着手が可能となります。なお、本経過措置をもって事前着手制度は完全に廃止となります。

 

(4)サプライチェーン強靱化枠の対象経費・対象外経費

サプライチェーン強靱化枠の対象経費は、以下の通りです。
◆建物費専ら補助事業のために使用される工場その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費が対象となります。構築物」に係る経費、建物の単なる購入や賃借は対象外となりますので、ご注意ください。

◆機械装置・システム構築費
①専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作に要する経費、②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の導入・構築に要する経費、③①又は②と一体で行う、改良、据付け又は運搬に要する経費が対象となります。サプライチェーン強靱化枠は、生産のための機械装置の導入は必須です。なお、既存の機械装置等の単なる置き換えに係る経費は対象外です。

サプライチェーン強靱化枠の対象外経費の例を以下に示します。他の枠よりも対象外経費が多く設定されています。
・既存事業に活用する等、専ら補助事業のために使用されると認められない経費
・技術導入費、専門家経費、運搬費(建物費、機械装置・システム構築費に計上する経費を除く)、広告宣伝・販売促進費、外注費(建物費、機械装置・システム構築費に計上する経費を除く) 等
・建物の撤去、移転に要する費用
・導入する機械装置を設置するために既存機械装置等を撤去、移転する費用
・不動産の購入費、構築物の購入費、株式の購入費
・事業計画書・申請書・報告書等の事務局に提出する書類作成・提出に係る費用
・汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費・レンタル費(例:事務用のパソコン、プリンタ、スマートフォン等)
・自動車等車両、船舶、航空機等の購入費・修理費・車検費用  等

 

(5)サプライチェーン強靱化枠の特徴(第10回との違い)

第12回のサプライチェーン強靱化枠の特徴は、第10回(前回)と大きな違いはありませんが、いくつか変更点があります。

①事前着手が原則廃止

事業再構築補助金では、第12回公募より事前着手制度が原則廃止となります。経過措置はありますが第12回で初めてサプライチェーン強靱靭化枠に応募申請する場合は、交付決定前に補助事業を開始すると、補助金の交付対象とはなりませんので、ご注意ください。

②書類審査の審査項目が変更

第12回公募の審査項目のうち、第10回公募からの変更箇所は強調文字で以下で示します。第12回公募では、新規事業の有望度や公的補助の必要性がより問われており、政策点ではほぼ同じ内容となっています。

適格性 ① 補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率5.0%以上の増加等を達成する取組みであるか。
事業再構築指針(国内回帰又は地域サプライチェーン維持・強靱化)に沿った取組みであるか
新規事業の
有望度
① 新規事業が、継続的に売上・利益を確保できるだけの規模を有しているか。成長が見込まれる市場か。
補助事業で取り組む新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか
③ 競合分析を実施し、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。
事業の実現
可能性
① 中長期課題を検証し、事業化までの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。
② 最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できるか。金融機関等からの資金調達が見込めるか。
③ 補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか。
公的補助の
必要性
川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を生み出す事業など、国が補助する積極的な理由がある事業はより高く評価
② 補助事業として費用対効果が高いか。
③ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。
④ 本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。
国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか
政策点 ① ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。
② 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
③ 新型コロナウイルス等が事業環境に与える影響を乗り越えるための生産拠点の見直しなど、レジリエンスや事業継続力を高めた、サプライチェーン強靱化に資する有効な投資内容となっているか。
④ 成長性の高い高付加価値なものづくり、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
⑤ 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、サプライチェーン間の取引増加、周辺産業の活性化、雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。
⑥ 市場拡大する産業分野や地域のサプライチェーンにおける不可欠性が高い部品等を製造するなど、当該事業の国内回帰や地域サプライチェーン維持・強靱化により、我が国のサプライチェーン強靱化への貢献が期待できるか。

③口頭審査を実施

第10回公募は書類審査のみでしたが、第12回公募より書類審査に加えて口頭審査も行われます。口頭審査は、一定の審査基準を満たした事業者が対象となり、対象者には事務局から受験日時の案内があります。口頭審査では、本事業に申請された事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等の観点について審査されます。オンライン(Zoom等)にて、所要時間は1事業者につき15分程度と予定されています。事業計画書の内容を、事業者自身の言葉で説明できるよう準備を進めましょう

 

(6)サプライチェーン強靱化枠の採択率

事業再構築補助金の第1回から第11回までの採択率の推移を以下に示します。第10回公募でのサプライチェーン強靱靭化枠 の採択率は、50.3%(応募 157件 採択 79件)で、第10回公募全体の採択率48.1%(応募 10,821件 採択 5,205件)と同程度でした。第11回公募全体の採択率は、26.5%(応募 9,207件 採択 2,437件)であり、第10回公募(48.1%)と比較して大幅に低下(-21.6%)しました。

採択率推移
<第10回の採択率> ( )は前回の採択率
・成長枠    : 応募 2,734件 採択 1,242件 採択率 45.4%
・グリーン成長枠: 応募 631件 採択 262件 採択率 41.5%(39.7%)
・産業構造転換枠: 応募 275件 採択 102件 採択率 37.1%
・最低賃金枠  : 応募 249件 採択 133件 採択率 64.1%(53.4%)
・回復・再生枠 : 応募 6,775件 採択 3,387件 採択率 50.0%(51.4%)
・サプライチェーン強靱化枠 : 応募 157件 採択 79件 採択率 50.3%
・卒業促進枠  : 応募 2件 採択 0件 採択率 0.0%
・大規模賃金枠 : 応募 202件 採択 55件 採択率 27.2%

第12回公募全体の採択率は、第11回公募(26.5%)と同程度に厳しくなると、サプライチェーン強靱化枠の採択率も第10回公募(50.3%)よりも下がる可能性があります。しかし、事業者の売上向上や新たなビジネスモデルの確立などの経営改善に繋がる具体的な事業計画を作成することで、採択に結び付く可能性は大幅に高まります

(7)まとめ

今回は事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠の該当などについてお伝えしました。サプライチェーン強靭化枠は他の事業類型と比べると補助限度額は最大5億円と高額であるため、第12回公募においても採択へのハードルが高いことが予想されます。サプライチェーン強靭化枠への申請を検討する場合は、第12回公募の申請に向けて上記のポイントを押さえ、添付書類、事業計画書共に計画的に準備しましょう。

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