事業再構築補助金の第12回公募が開始されました。事業再構築補助金はその効果や採択審査に対し厳しい指摘が相次ぎ制度の見直しが行われました。そのため公募が延期され、前回から半年以上経過しての公募再開となりました。本記事では最新の公募要領をもとに大幅に変更された2024年の事業再構築補助金についてご説明します。
事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金の特徴
事業再構築補助金の対象となる事業の例
事業再構築補助金の申請枠
申請にあたっての注意点
事業再構築補助金と産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)との連携
事業再構築補助金の口頭審査
2024年の事業再構築補助金のまとめ
新型コロナの影響を受け当面の需要や売上の回復が期待しづらいなかで、新規事業等への挑戦により成長、回復を図る取組みを支援する補助金です。そうした挑戦を事業再構築と呼びます。
下図は事業再構築指針に示された事業再構築の定義を示しています。
出典:事業再構築補助金 事業再構築指針の手引き(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/)
事業再構築は、新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、地域サプライチェーン維持・強靱化のいずれかに合致する新たな取組みを指します。
そのため、既存事業の延長では対象となりません。新規事業や国内サプライチェーン強化など新たな取組みが必要です。
事業再構築補助金の申請枠は3枠5類型、上乗せ措置は2類型となっています。下図は事業再構築補助金の申請枠と上乗せ措置の概要を示しています。
出典:事業再構築補助金 第12回公募要領をもとに作成(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/)
上図の通り各枠は、成長分野進出、コロナの影響からの回復、国内サプライチェーンの強化に大別されています。また成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠では、規模拡大または賃金引上げを支援する上乗せ措置が用意されています。
事業再構築補助金は建物費、機械装置、システム構築などが幅広く対象となります。さらに補助上限額が比較的大きいことも特徴です。将来の収益の柱を生み出すほどの規模の大きな投資に対応した補助金と言えます。特に多額の建物工事費用が対象となる補助金は少ないため、工事が必要となる事業を検討されている方に適しています。もちろん機械装置、システム構築を主軸とした事業にも適した補助金です。
事業再構築補助金ではどのような事業が対象となるのでしょうか。直近の第10回、第11回の採択事例から対象となる事業の傾向を見ていきましょう。
製造業
・従来の技術を活かしたEVの部品や蓄電池、半導体の製造機器や搬送部品、航空宇宙産業への進出
・地域の木材を活用した家具製造販売
・未利用野菜、従来廃棄されていた食品を活用したスイーツなどの新商品製造販売
・海外製造拠点の国内回帰、海外購入部品の自社製造などサプライチェーンの国内回帰卸売業
・食肉卸が総菜製造進出など、従来の取扱い商品や地域特産品を活用した製造業進出
・水産仲卸の目利きを活かした魚介飲食店や水産加工業への進出
・宝石卸業がオーダーメイドアクセサリーに進出建設業、不動産業
・建築設計業の設計力を活かした高付加価値家具への進出
・地域の高層ビル需要を見越した鋼管製造、プレート金具製造への進出
・余剰資材の再利用プラットフォームの構築
・不動産業による体験型カフェなどの飲食業、インバウンド向け宿泊業への進出飲食、サービス業
・ラーメン店がスーパー等で販売される麺、餃子の製造販売に進出
・焼肉、うなぎ店が冷凍食品のEC販売に進出
・自動車整備業による電気自動車に対応した高品質自動車整備サービスの提供
・クリーニング事業から宿泊施設向けリネンサプライ事業への転換
・建設工事用テント等のクリーニング技術を活用したキャンプ用品のクリーニングサービス提供
既存事業の強みを活かして、EV、半導体、インバウンドなどの新たな成長分野へ進出する事例が多く見られます。また卸業から製造業へと進出するなど、周辺分野を開拓することで自社の付加価値創出力の強化を図る事業も有望です。従来廃棄されていた食材、資材や地域資源など、活用が十分ではない資源を見つけることもヒントとなります。
また、新型コロナで顕在化したサプライチェーンの脆弱性を見直し国内回帰させる事業も多く見られます。
「通常類型」と「GX進出類型」の2類型があります。
この類型では、拡大する成長市場への進出、縮小市場となる既存事業からの脱却のいずれかが対象です。
成長市場は事務局が対象業種等の例(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/seichowaku_list.pdf)を挙げています。宇宙機器、産業用機械、アニメーション制作、インバウンド向け宿泊業など多岐にわたります。
また、縮小市場の対象業種等の例(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/tenkanwaku_list.pdf)です。こちらは出版業、自動車部品製造業、一般乗用旅客自動車運送業(タクシーなど)が挙げられています。また、地域の基幹となる大企業の撤退による影響を大きく受けている場合も対象となります。
グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組みが対象です。
政府は2050年のカーボンニュートラルを目指しており、そのための「グリーン成長戦略」が策定されました。下図は「グリーン成長戦略」に対応した主な分野を示しています。
出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」 (https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html)
EV、バイオ・水素燃料、ZEH住宅、半導体、データセンター、再生可能エネルギーなど様々な分野の取組みがまとめられています。こうしたグリーン成長戦略に沿った取組みが対象です。
詳しくは成長分野進出枠の記事をご確認ください。
「通常類型」と「最低賃金類型」の2類型があります。
この類型で申請するためには下記のいずれかを満たす必要があります。
(a)コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること
(b)再生事業者(Ⅰ.中小企業活性化協議会等において再生計画を策定中の者又はⅡ.中小企業活性化協議会等において再生計画を策定済かつ再生計画成立後3年以内の者)であること
つまり、コロナ借換保証等による融資借換を行っている事業者、または再生計画を策定中、策定済みの事業者が対象です。
この類型では、最低賃金に関する下記の要件があります。
2022年10月から2023年9月までの間で、3か月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
最低賃金類型ではコロナ借換要件は必須ではありませんが、満たさない場合は補助率引き下げとなります。
詳しくはコロナ回復加速化枠の記事をご確認ください。
成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠では2種の上乗せ措置が用意されています。この上乗せ措置はいずれか一方を選んで、上記枠とともに申請できます。
この上乗せ措置には下記の要件があります。
【卒業要件】
補助事業終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること
下図は卒業要件における応募申請時の法人規模と要件達成の規模を示しています。
出典:事業再構築補助金 第12回公募要領(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/)
卒業促進上乗せ措置では、成長分野進出枠・コロナ回復加速化枠に準じた金額が上乗せされます。
この上乗せ措置には、賃金引上げと従業員増員の2つの要件があります。双方ともに達成が必須となります。
【賃金引上要件】
成長分野進出枠又はコロナ回復加速化枠の補助事業の終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
【従業員増員要件】
成長分野進出枠又はコロナ回復加速化枠の補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年平均成長率1.5%以上増員させること
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置では、3,000万円を上限に上乗せされます。
ただし、いずれの上乗せ措置も要件未達の場合は、上乗せ措置による補助金は交付されません。
国内サプライチェーンの強化に取組む事業が対象です。事業再構築指針により、「国内回帰」、「地域サプライチェーン維持・強靭化」の2つに分類されます。
現在は海外で製造等をしている製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を新たに整備する事業が対象です。海外から国内に回帰させることでサプライチェーンの強靭化を図ります。
この分類では、地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠であり、その供給が不足する又はそのおそれのある製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を新たに整備する事業が対象です。そうした地域において不可欠な加工工程を強化することでサプライチェーン強靭化を図ります。
詳しくは、サプライチェーン強靭化枠の記事をご確認ください。
申請にあたり、事業計画書を認定経営革新等支援機関と相談の上で作成が必要です。認定経営革新等支援機関の確認を受けた証明として確認書の発行が必須となります。当プロコン補助金では、認定経営革新等支援機関による確認書の発行が可能です。
補助事業を実施するための資金を融資等でまかなう場合は、その金融機関に事業計画書の確認を受ける必要があります。金融機関により確認書の発行に要する期間が異なります。何日で発行可能かを事前に確認されることをお勧めします。
補助事業で機械装置等を導入する場合に提出が必要です。既存事業の機械装置等の置き換えではないかを確認します。つまり老朽化更新など、単なる置き換えでは補助対象となりません。ご注意ください。
下図は申請枠ごとの補助対象期間を示しています。
出典:事業再構築補助金 第12回公募要領(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/)
事業実施期間内に実行可能かを事前に確認した上で申請しましょう。事業再構築補助金は交付審査に数か月程度以上の時間を要します。発注は交付決定日以降に可能となります。そのため、交付審査が遅れるほど補助対象期間が短くなります。また、機械の納入遅れ、人員不足による工事遅延が発生するかもしれません。発注予定先などへの事前確認をおすすめします。
なお、第11回までに実施されていた事前着手制度は原則廃止となりました。例外として第10回、第11回公募で事前着手制度の対象類型で不採択になった事業者のみ事前着手制度の対象です。そのため、原則交付決定日前の事業実施はできません。
第12回より事務局が開催する採択後の説明会参加が必須となりました。もし説明会に参加できなかった場合、自動的に採択は無効となります。そのため説明会の日程をよく確認し、必ず参加しましょう。
※申請前の説明会への参加については任意です。
成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠では、厚生労働省の産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)との併給が可能です。これは補助事業に必要となる人員を新たに雇用する場合の助成です。中小企業の場合、1人あたり250万円、5人までが対象です。
助成対象となる要件等は厚生労働省のWebサイトをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/sankokinsangyourenkeijinzaikakuhotou_00001.html
一定の審査基準を満たした事業者は口頭審査の対象となる場合があります。口頭審査はオンライン(Zoom等)で行われます。所要時間は1事業者15分程度です。審査は法人代表者等の1名のみが出席できます。外部のコンサルタントなどは同席できません。経営者自身が事業計画の内容を具体的に説明できる必要があります。事前準備をしっかりと行いましょう。
本記事では2024年の事業再構築補助金について概要をご説明しました。補助金額が比較的大きく活用する価値のある補助金です。一定規模の投資を必要とする新規事業の立ち上げ、サプライチェーン強靭化への取組みの助けとなります。負担が大きい建築費が対象となる点も見逃せません。新たな事業への取組みをお考えの方は是非ご検討ください。
プロコン補助金.comでは、事業再構築補助金についても他の補助金の申請サポートと同様に、高い専門性を持つ補助金申請の実績・経験が豊富な経営コンサルタント(認定経営革新等支援機関)が、実務に沿った実効性の高い事業計画書の作成、口頭審査に向けたサポート、交付申請までを一貫して支援します。事業再構築補助金への申請をご検討中の方は、是非一度、プロコン補助金comへお問い合わせください。