2022年3月28日から、事業再構築補助金の第6回公募が始まりましたが、この公募要領には大きな改訂がありました。
今回は、改訂の中でも注目されている「グリーン成長枠」についてご紹介します。
目次:
1.事業再構築補助金申請枠について
2.グリーン成長枠の特徴
3.グリーン成長戦略の14の重点分野を紹介
4.まとめ
1.事業再構築補助金申請枠について
「~枠」とは、補助金申請額や従業員数などの申請者の要件に合わせて設けられている、補助金の事業類型です。第6回の事業再構築補助金では、第5回まで存在した「卒業枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」の事業類型がなくなり、次の5つの事業類型で編成されました。
・「通常枠」
・「大規模賃金引上枠」
・「回復・再生応援枠」
・「最低賃金枠」
・「グリーン成長枠」
今回創設された「グリーン成長枠」は、他の事業類型にはない特徴があるので、深掘りしてご紹介します。
2.グリーン成長枠の特徴
① 中小企業者等~1億、中堅企業等~1.5億という高額の補助上限額
事業再構築補助金の事業類型のうち補助上限額が最も高額で、中小企業者等では100万円~1億円(補助率1/2)、中堅企業等では、100万~1.5億円(補助率1/3)です。
事業再構築補助金第6回 公募要領抜粋
:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo006.pdf
② 売上高減少要件の撤廃
「売上高減少要件」とは、事業再構築補助金に特徴的な要件で、コロナ以前と比較して合計売上高や合計付加価値額(※1)が減少しているかどうかの要件です。比較する期間や減少割合の算出の仕方に注意が必要なので、実際に算出する際は公募要領の「【売上高等減少要件】について」という項目をご確認ください。
この「売上高減少要件」が、「グリーン成長枠」では撤廃されています。売上高減少要件を撤廃してでも、日本経済の構造転換を促進させたいという事業再構築補助金事業の意図が感じ取れます。新型コロナウイルス感染症の影響を受けなかった事業者の方でも、新事業を検討されている方は活用できますので、必要に応じて検討ください。
※1付加価値額:営業利益、人件費、減価償却費を足したもの
③ 過去に事業再構築補助金に採択された事業者でも申請可能
過去の事業再構築補助金の公募回で採択又は交付を受けている場合でも、グリーン成長枠であれば、申請が可能です。ただし、一定の減点が入ることが明記されているので、初めて申請される方や過去に不採択となった方と比較すると採択へのハードルが高くなりますが、申請できるという点は大きな変更となります。
再度申請する事業者には別事業要件と能力評価要件が設けられており、別事業要件及び能力評価要件の説明書(Wordで最大2ページ)の提出が必要です。この説明書は、「過去の公募回で採択されている又は交付決定を受けている補助事業の内容及び今回グリーン成長枠で取り組む事業内容について記載し、異なる事業内容であること」、と「過去の公募回で採択されている又は交付決定を受けている補助事業を行いながら、今回応募するグリーン成長枠での補助事業を問題なく実行できる体制及び資金力があること」を簡潔に説明することが求められています。そのほかの申請に必要な説明書等はこちらからダウンロードが可能です。
また、研究開発・技術開発計画書(Word 5ページ程度)又は人材育成計画書(Word 5ページ程度)という形で、2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成について、書類を提出する必要があります。
3.グリーン成長戦略の14の重点分野を紹介
グリーン成長戦略とは、2050年のカーボンニュートラル実現にむけ経済産業省が制定した戦略(2021年6月)です。14の重点分野における工程表を作成した上で、大胆な投資によって、イノベーションを起こすといった企業の前向きな挑戦を後押しし、産業構造や経済社会の変革に向けて進むことを宣言しています。
事業再構築補助金のグリーン成長枠は、グリーン成長戦略に沿って成長戦略を描く企業への投資ととらえることができるでしょう。
14の重点分野は以下の表にまとめられています。
出典「グリーン成長枠」想定事例集:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/cases/green_seityo_soteijirei.pdf
14の重点分野の詳細は想定事例集や経産省のサイトに記載されていますが、ここでは、想定事例集に掲載の新事業について、5つの事例を紹介します。(想定事例集:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/cases/green_seityo_soteijirei.pdf
から引用、抜粋しています。)
いずれの事例も①重点分野に沿った新分野展開や業種転換を行うために、②具体的な施策を実施する、というストーリーとなっています。
重点分野(2) 水素・燃料アンモニア産業
<想定する申請事例>
①近年の環境意識の高まりの機会を捉えるため、航空機部品製造で培ったノウハウを活かした、水素ステーション用部品の製造を行い、事業再構築を図る。
②水素ステーション用部品は、加工精度要求が極めて高く、自社の強みである加工技術をさらに昇華させる必要があるため、大手自動車メーカーや燃料輸送事業者との共同研究により、技術レベルの向上も図る。
重点分野(6) 半導体・情報通信産業
<想定する申請事例>
①電気工事業で培ったノウハウを活かし、既存顧客(~300人規模の製造業)向けに、設計から、ソフトウェア提供、保守までを一気通貫で行うデジタル化支援事業に進出し、事業再構築を図る。
②事業実施にあたっては、本事業の担当スタッフがソフトウェアメーカへ出向し、持ち帰ったノウハウを通じて社内人材の育成を行う
重点分野(8) 物流・人流・土木インフラ産業
<想定する申請事例>
①製造事業者、卸販売事業者及び小売販売事業者と連携し、在庫データの共有化等を通して、 配送業務を集約・効率化した配送受託業務に取り組む。
②実施にあたっては、在庫データの共有化等のシステム理解を深めるため、外部の専門家を招聘して 研修を行い、人材育成を行う。
重点分野(12) 住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業
<想定する申請事例>
①中古住宅の不動産仲介事業に参入し、省エネ、高耐震のノウハウを生かした建築技術によりフルリノベーションを行い、新築同等の高性能住宅をリーズナブルな価格で提供。
②現状の建屋の状態を正確に評価することが必要であり、このノウハウの習得のため、地元設計事務所等と連携し、当社スタッフ向けの人材育成研修を実施。
重点分野(13) 資源循環関連産業
<想定する申請事例>
①自動車販売を行っていたが、顧客ニーズへの受動的な対応となるため、能動的に商品開発・販売を行う事業として、地域の食品廃棄物等を活用したバイオプラスチック製造業への転換を図る。
②実施にあたっては、バイオプラスチックの製造の高度化に向けた技術開発を行う
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
第6回の事業再構築補助金に創設された「グリーン成長枠」の内容について、想定事例を交え紹介しました。「コロナの影響は小さいため自社には関係がない」「一度採択されたから、二回目は無理だろう」などと、考えてらっしゃる事業者の皆様でも、今回の記事から興味を持たれた方は事業再構築補助金を検討されてみてはいかがでしょうか。