大規模成長投資補助金を申請するには、投資額が10億円以上であり、賃上げ要件を満たす必要があります。今回は、この成長投資計画期間で満たす必要がある“賃上げ要件”について説明します。
①投資額10億円以上(外注費・専門家経費を除く補助対象経費分)であること
②賃上げ要件を達成すること
[出典:大規模成長投資補助金 公募要領]
「賃上げ要件」は、①補助事業の終了後3年間の補助事業に関わる従業員及び役員の1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、補助事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であり、②申請時に基準率以上の目標を掲げ、その目標を交付決定までに従業員等に表明し達成する要件です。
この賃上げ要件のポイントを、具体的に説明すると以下となります。
◆補助事業に関わる従業員及び役員とは、原則として、補助事業を主として行う事業部門を最小範囲としています。ただし、判定が困難である場合などについては、事業部門を超える範囲(例えば、事業者全体)とすることも可能です。 補助事業1人当たり給与支給総額の算定にあたり含める補助事業に関わる従業員は、基準年度及びその算定対象となる各事業年度において、全月分の給与等の支給を受けた従業員とします。当該事業年度において、産前・産後休業、育児休業、介護休業など事業者の福利厚生等により時短勤務を行っている従業員は、算定対象から除くことができます。なお、補助事業に関わる役員がいる場合、補助事業に関わる従業員の1人当たり給与支給総額とは別に、補助事業に関わる役員の1人当たり給与支給総額を算定し、従業員及び役員それぞれの1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が基準率以上であることが必要です。つまり、従業員と役員の1人当たり給与支給総額は、別々に算出して管理する必要があります。
<例>
・従業員の給与支給総額:450百万円/年、人数:150人 ⇒ 従業員1人当たり給与支給総額は3百万円/人
・役員の給与支給総額:20百万円/年、人数:2人 ⇒ 役員1人当たり給与支給総額は10百万円/人
◆給与支給総額とは、「給料、役員報酬、賞与、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当)等」の合計です。
◆1人当たり給与支給総額の年平均上昇率とは、補助事業が完了した日を含む事業年度(以下、「基準年度」という。)の補助事業1人当たり給与支給総額と比較した、基準年度の3事業年度後(以下、「最終年度」という。)の補助事業1人当たり給与支給総額の年平均上昇率であり、計算式・事例は下記のとおりです。
<計算式>
・補助事業1人当たり給与支給総額の年平均上昇率=(最終年度の補助事業1人当たり給与支給総額/基準年度の補助事業1人当たり給与支給総額)^(1/3)-1
<事例>
・以下は、補助事業実施場所が宮城県の場合の事例です。補助事業完了(基準年度)はR8年度であり、最終年度はR11年度です。宮城県の給与支給額の年平均上昇率は3.0%となります。各年度の上昇率は、1年目:4.0%、2年目:2.9%、3年目:4.7%となり、年平均上昇率は、計算式により3.8%となり、宮城県の目標値:3.0%をクリアすることができます。
[出典:大規模成長投資補助金 公募要領]
<都道府県別の賃上げの基準率>
・補助事業を実施する都道府県の年平均上昇率(複利計算)の基準値は、以下のとおりです。補助事業実施場所の都道府県における直近5年間(2018年度~2023年度)の最低賃金の年平均上昇率(出典:大規模成長投資補助金 公募要領)です。
なお、本補助金の公募の申請時において、確定した決算がない場合、基準年度は補助事業の完了した日の属する事業年度の翌事業年度とすることができます。また、新規事業の場合など、基準年度の補助事業1人当たり給与支給総額を特定することが困難な場合、事業者全体の1人当たり給与支給総額を用いることができます。
◆1人当たり給与支給総額の確認については、法人の場合は、補助事業に関わる従業員分の賃金台帳の提出を求め、記載された金額で判断されます。 個人の場合は、所得税青色申告決算書(白色申告の場合、収支内訳書)の提出を求め、給与賃金、専従者給与、青色申告特別控除前又は白色申告事業専従者控除前の所得金額の欄に記載された金額で判断されます。
この補助金では、以下のケースの場合、補助金の返還を行う必要があります。ただし、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求められません。
目標とする年平均上昇率と最終年度の1人当たり給与支給総額(以下、「目標水準」という。)について、交付決定までに全ての従業員又は従業員代表者、役員(補助事業に関わる役員がいる場合に限る。)に対して表明する必要があります。なお、交付決定後に目標水準を事務局のホームページに公表することが要件となります。
下表「認められる基準年度における 1 人当たり給与支給総額の水準」(大規模成長投資補助金 公募要領)の“認められるケース”では、基準年度の1人当たり給与支給総額が、公募の申請をした時点(R7年度)の直近の事業年度の1人当たり給与支給総額以上(+5%)となっています。一方、”認められないケース”では、申請時の1人当たり給与支給総額が基準年度では-15%と下がっています。このように基準年度と最終年度だけの比較ではなく、申請時と基準年度の比較も考慮する必要があります。
持続的な賃上げを実現するため、補助金の申請時に掲げた1人当たり給与支給総額の年平均上昇率の目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金の返還を求められます。よって、都道府県の年平均上昇率(複利計算)の基準値をクリアするだけでなく、当初掲げた目標もクリアする必要があるので、目標は高すぎず、実現可能な目標水準に設定した方が良いでしょう。
大規模成長投資補助金の賃上げ要件についての説明は、以上です。大規模な補助金を獲得しても、要件をクリアしなければ返還する必要がありますので、要件をクリアできるよう適切な事業運営を実施しましょう。
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