記事

大規模成長投資補助金の概要と特徴

本記事では、2024年3月6日から公募が開始された「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金」(以下、「大規模成長投資補助金」)の概要をお伝えします。また本補助金への申請を検討する企業の方は、これまで補助金申請の経験がないケースが多いと考えられるため、他の補助金と比べた本補助金の特徴についてもお伝えします。

<目次>

1.大規模投資補助金とは

2.大規模成長投資補助金のスケジュール

3.大規模成長投資補助金の補助対象者

4.大規模成長投資補助金の補助事業の要件

5.大規模成長投資補助金の特徴

6.大規模成長投資補助金のまとめ

1.大規模投資補助金とは

・大規模成長投資補助金は、中堅・中小企業が人手不足等の喫緊の課題に対応し、成長していくことを目指して行う工場等の拠点新設や大規模な設備投資を促進することで、地方における持続的な賃上げを実現することを目的とした補助金です。 この制度は、持続的な賃上げを目指す中堅・中小企業の成長を支援し、人手不足に対処するために設けられており、新設される工場や大規模設備への投資を促進し、地域の雇用と賃上げを実現することを目指しています。

 

2.大規模成長投資補助金のスケジュール

・この補助金の1次公募のスケジュールは、令和6年3月6日公募開始、4月30日17時締め切りです

<大規模成長投資補助金のスケジュール>
 【出典:経済産業省
スケジュール

1次公募終了後に2次公募が行われる予定です。1次公募の不採択事業者が2次公募に申請し、採択を受けることは可能です。(公募要領P5

 

3.大規模成長投資補助金の補助対象者

・補助対象者は、中堅・中小企業(常時使用する従業員数が2,000人以下の会社等)で、一定の要件を満たす場合は、中堅・中小企業を中心とした共同申請(コンソーシアム形式:最大10者)も対象となります。

中小企業基本法における中小企業者の定義に該当しても、上記の定義に該当しない場合は対象外となりますので、ご留意ください。小規模事業者やみなし大企業も対象外です。また、実施する補助事業の内容が1次産業である事業は、補助対象外となります。

 

4.大規模成長投資補助金の補助事業の要件

(1)補助事業の要件
補助事業の要件は、①補助事業への投資額と、②賃上げ要件の達成の2つです。

補助事業への投資額:補助事業への投資額(建物費と機械装置費、及びソフトウェア費の合計)が10億円以上の事業であることが求められます。補助率は1/3のため仮に、投資額10億円の事業に対し補助される金額は、3.3億円となります。

賃上げ要件の達成:補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員等1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率(基準率)以上であることが必要です。具体的には、申請時に基準率以上の目標を掲げ、その目標を従業員等に表明の上、達成することが要件となります。以下は、目標値の計算式、事例(石川県)、補助金返還のケースです。

事例
(出典:経済産業省

(2)補助対象経費
この補助金の補助対象経費は、以下の通りです。申請時は見積書の提出は不要ですが、採択後の交付申請時は基本的に見積書と相見積書が必要となります。

1.建物費 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費
2.機械装置費 ① 専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費
② ①と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費
3.ソフトウェア費 ① 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費
② ①と一体で行う、改良・修繕に要する経費
4.外注費 補助事業遂行のために必要な加工や設計、検査等の一部を外注(請負・委託)する場合の経費
5.専門家経費 補助事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費

一方、対象外経費は以下となります。汎用性が高く、補助事業以外でも使用できるものや、成長投資計画の作成の外部へ委託費などは対象外となります。投資予定の経費が該当しないか確認しておきましょう。

1.建物費 建物の単なる購入や賃貸、土地代、建物における構築物(門、塀、フェンス、広告塔等)、撤去・解体費用は対象外
2.機械装置費 構築物、船舶、航空機、車両及び運搬具、補助対象外設備に関する据付け・運搬等は対象外
3.ソフトウェア費 パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用は対象外
4.外注費 成長投資計画の作成に要する経費、外注先が機械装置等の設備やシステム等を購入する費用、外部に販売・レンタルするための量産品の加工を外注する費用は対象外
5.専門家経費 成長投資計画の作成に要する経費は対象外
6.その他 収入印紙、 振込手数料、消費税及び地方消費税額等、各種保険料、同一代表者・役員が含まれている事業者、みなし同一法人内の事業者、資本関係がある事業者への支払等の費用は対象外

(出典:経済産業省

(3)補助上限額、事業期間、予算額
・補助上限額:補助額の上限は50億円、補助率は1/3以内です。補助事業への投資額の最低金額が10億円ですから、補助額は3.3億円(10億円の1/3)~50億円、補助投資額は10億円~150億円(50億円の3倍)となり、中堅・中小企業にとっては大型の投資となります。
・事業期間交付決定日から最長で令和8年12月末までとなります。ただし、補正予算の早期執行の観点から、極力、令和6年度(令和7年3月)末までに設備等の支払い・設置を前倒しする投資計画の策定が必要です。
・予算額総額3,000億円(令和8年度までの国庫債務負担含む)となります。令和5年度補正予算は1,000億円です。

(4)審査基準
・本補助金の審査は、提出された申請書類に基づき、形式要件(従業員数2,000人以下等)の適格性の確認及び計画の効果・実現可能性等、以下の項目にて定量的・定性的に審査を行い、採択事業者を決定します。

①経営力 長期成長ビジョン(5~10年後の社会に価値提供する自社のありたい姿等)が具現化されているか
・外部環境・内部環境の認識を踏まえた事業戦略が論理的に構築され、補助事業が効果的に組み込まれているか
会社全体・補助事業双方の成果目標等が示され、その達成に向けて効率的に管理する体制(取締役によるガバナンス機能やステークホルダーへの情報発信等)が構築されているか
②先進性・
成長性
・補助事業で取得した設備等により生み出す製品・サービスや生産方式等は、継続的に自社の優位性が確保できる差別化された計画か。
・補助事業により、労働生産性の抜本的な向上が図られ、当該事業における人手不足の状況が改善される取組か。
・補助事業の関連する市場規模の伸びを上回る製品・サービス等の売上高成長が見込まれるか。
③地域への
 波及効果
・補助事業により、従業員1人当たり給与支給総額、雇用、取引額の増加等、地域への波及効果が見込まれる取組か。
・リーダーシップの発揮により、地域企業への波及効果、連携による相乗効果が見込まれるか。
④大規模投資・
 費用対効果
・収益規模に応じたリスクをとった大規模成長投資であるか。
・補助金額に対して、生み出される付加価値額が相対的に大きな取組か。
・従前よりも一段上の成長・賃上げを目指す等、企業の行動変容が示されているか。
⑤実現可能性 ・補助事業を適切に遂行できる、財務状況・実施体制等が十分に確保されているか。
・補助事業の事業化に向けた課題の検証・解決方法・スケジュールが適正に見込まれており、実現可能性が高いか。
・補助事業によって提供される製品・サービスのユーザ、市場及びその規模が明確で、市場ニーズの有無を検証できているか。

(出典:経済産業省

 

5.大規模成長投資補助金の特徴
大規模成長投資補助金は、以下の特徴があります。初めて補助金の申請を行う方は、以下の特徴を把握した上で、公募要領もご確認ください。

(1)電子申請
・大規模成長投資補助金の申請は、他の経済産業省系の補助金と同様に電子申請システム「補助金申請システム:jGrants2.0を利用して行う必要があります事前に“gBizIDプライム”のアカウントを取得する必要があります。jGrants2.0のアカウントの取得には、gBizIDの申請書と必要書類(以下参照、出典:デジタル庁)を郵送の上、事務局による審査を経て登録する必要があります。アカウントの登録まで1週間程度を要しますので、早めに手続きを行いましょう。

なお、本アカウント及びパスワードを外部支援者等の第三者に開示することは、GビズIDの利用規約第10条に反する行為であり、トラブルの原因となり得ますので、ご注意ください。

(2)建物費が経費に含まれる
・大規模成長投資補助金には他の補助金では通常は対象外となる建物費が対象経費に含まれるのも特徴の一つです。他に建設費を対象経費に含めることができる補助金としては、事業再構築補助金が該当しますが、事業再構築補助金は建物の新築については“必要性が認められた場合に限り”とあり、認められるケースは少ないのが実情です。一方で、大規模成長投資補助金は、建物の建設(新築)、増築、改修、中古建物の取得に要する経費も対象となります。

(3)実現性の高い事業計画書(成長投資計画書)の作成が必要
・この大規模成長投資補助金では、事務局が指定した事業計画書((成長投資計画書フォーマットを利用して、表紙を含め35ページ以内で事業計画書(成長投資計画書)を作成する必要があります。
フォーマットの留意事項に“各ページのフォーマットはあくまで例示であり、資料の体裁(文字サイズ、図の大きさ)・分量を変えること(既存の中期経営計画・経営ビジョン等の引用・挿入等を含む)は可能ですが、各ページの記載ガイドについて十分な言及がない場合は、審査において十分に評価されない可能性があります。”と記載があるため、記載ガイドに沿って事業計画書を作成する必要がありますが、審査項目の全ては網羅されていないため、記載ガイドに合わせて公募要領の審査項目を確認しながら、事業計画書を作成する必要があります。以下は、事務局指定のフォーマットの目次です。


(4)ローカルベンチマークの作成が必要
・この補助金の提出書類の一つに“ローカルベンチマーク”があります。このローカルベンチマークは、政府の各種施策と連携しており、各種補助金等の申請に活用されています。

ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)とは、企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」を行うツールです。企業の経営者と金融機関・支援機関等がコミュニケーション(対話)を行いながら、ローカルベンチマーク・シートなどを使用し、企業経営の現状や課題を相互に理解することで、個別企業の経営改善や地域活性化を目指します。” (出典:経済産業省サイト

ローカルベンチマーク・シートは「6つの指標」(財務面)、「商流・業務フロー」、「4つの視点」(非財務面)の3枚組のシートから成りますが、大規模成長投資補助金の申請で提出するローカルベンチマークの様式は、財務分析のみとなります。以下は、財務情報の分析例です。

(出典:jGrants 公募申請様式(様式2より抜粋)

(5)プレゼンテーション審査がある
・書面審査(1次審査)を通過した申請は、地域ブロック単位で審査会を設置し、外部有識者(利害関係者を除く)による計画の効果・実現可能性等について定性面も含めたプレゼンテーション審査(2次審査)が行われます。 2次審査(5 月中旬~6 月中旬の開催予定)では、提出された成長投資計画を用いて申請企業の経営者自身によるプレゼンテーション及び外部有識者との質疑応答を行う必要があります。経営者以外の役員や事業責任者が同席し補足説明することも可能ですが、経営者の出席・説明が必須となります。
なお、外部のコンサルティング会社等は、プレゼンテーション審査への同席は認められませんので、経営者自身が成長投資計画の内容具体的に説明できるよう、事前準備をしっかりと行いましょう。

(6)補助金の概算払を受けることができる
・大規模成長投資補助金では、個別の支出状況に応じて補助事業期間内に補助金の概算払を受けることが可能です。原則は、他の補助金と同様に補助事業期間内に補助事業のために支払いを行った補助対象経費に対して、補助事業完了後の確定検査にて交付すべき補助金額が確定した後に、補助金の精算(入金)が行われます。つまり、補助事業期間の最長である令和8年12月末まで事業を行った場合は、補助金が支払われる時期は令和9年1月以降になります。この補助金が入金するまでに、資金切れとならないよう、金融機関等と連携をとりながら計画的な資金繰りが重要です。なお、資金調達については、本補助金の交付決定通知を電子記録債権化し、これを譲渡担保として金融機関から融資を受けられるサービス(PO ファイナンス)を利用することが可能です。

 

6.大規模成長投資補助金のまとめ

・今回は大規模成長投資補助金の概要と特徴をお伝えしました。大規模成長投資補助金は他の補助金に比べ、具体的で実効性の高い事業計画書(成長投資計画書)の作成が必要です。そのため、申請の準備は余裕を持ち、計画的に進めることをお勧めします。

参照:令和5年度補正「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金(中堅・中小成長投資補助金)」の公募について

 

プロコン補助金.comでは、大規模成長投資補助金ついても他の補助金の申請サポートと同様に、高い専門性を持つ補助金申請の実績・経験が豊富な経営コンサルタント(認定経営革新等支援機関)が、実務に沿った実効性の高い事業計画書(成長投資計画書)の作成、プレゼンテーション審査に向けたサポート、交付申請までを一貫して支援します。大規模成長投資補助金への申請をご検討中の方は、是非一度、プロコン補助金comへお問い合わせください。

PAGE TOP