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大規模成長投資補助金の審査基準 採択を得られる事業計画とは

大規模成長投資補助金の審査基準 採択を得られる事業計画とは

大規模成長投資補助金は、どのような基準で審査されるのでしょうか。採択を得るためには、審査基準を意識することが不可欠です。申請された事業計画書は、審査員によって定量的・定性的に審査され、採択事業者が決定されます。
本記事では、大規模成長投資補助金の審査基準について説明します。

大規模成長投資補助金の審査基準

大規模成長投資補助金の審査は、以下の項目に沿って審査されます。

大規模成長投資補助金の審査基準_図表1_審査項目

出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金特設サイト「概要資料」(https://seichotoushi-hojo.jp/

①経営力

外部環境、自社の状況を踏まえ、長期的な視点での自社の成長ビジョンと事業戦略を体系的に描けているか、実行できる体制があるかが問われます。

②先進性・成長性

ターゲット市場で独自の地位を確立し、高い成長性を持続できる事業を実現できるかが問われます。

③地域への波及効果

新たな雇用創出、賃上げ、ステークホルダーとの連携を通じて地域にプラスの経済的波及効果が期待できる事業かが問われます。

④大規模投資・費用対効果

大規模な投資を有効に活用し、自社が持つ強みとシナジー効果を発揮し、自社が一段上の成長を目指すことが出来る事業かが問われます。

⑤実現可能性

十分な市場規模、明確な市場ニーズがあるか、経営資源や金融機関の支援を勘案し、事業計画を適切に実施できるかが問われます。

①から⑤の審査基準は、さらに3つに細分化されて項目が設けられています。それでは審査基準を項目ごとに見ていきましょう。

大規模成長投資補助金の審査項目

① 経営力

(ア) 社会課題や顧客ニーズの変化等のメガトレンドを踏まえ、5~10 年後の社会に価値提供する自社のありたい姿(長期成長ビジョン)が具体化されているか。その中において、高い売上高成長率及び売上高増加額が示されているか。

(イ) 市場・顧客動向を始めとした外部環境と、自社経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)等にかかる強み・弱みの内部環境を分析した上で、今後3~5年程度の事業戦略が論理的に構築され、その中で、補助事業が効果的に組み込まれているか。会社全体の売上高に対する補助事業の売上高は高い水準か。

(ウ) 会社全体・補助事業双方の成果目標等が示され、その達成に向けて効率的に管理する体制
(取締役によるガバナンス機能やステークホルダーへの情報発信等)が構築されているか。
※ 持続的な賃上げの実現には、補助金を活用した事業セグメントの成長のみならず、補助事業を通じて企業自身(経営全体)の持続的な成長につながっていくことが重要であることに鑑み、長期成長ビジョンの中での補助事業の位置付けや補助事業が企業自身の成長にどのようにつながるかについて、投資判断に必要な「経営力」の観点から確認します。

出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金特設サイト「公募要領」(https://seichotoushi-hojo.jp/

<解説>
(ア)「メガトレンド」とは、社会、経済、技術、環境などの広範な領域で、長期間にわたって大きな影響を与える主要なトレンドのことを指します。そうしたマクロかつ長期的な視点を踏まえて、高い成長性を持つ事業を描けているかが問われます。
下図は、経済産業省「産業技術ビジョン2020」で示された、2050年に向けた5つのメガトレンドを示しています。

大規模成長投資補助金の審査基準_図表2_メガトレンド

出典:経済産業省「産業技術ビジョン2020」(https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230602007/20230602007-2.pdf

自社の長期成長ビジョンは上図の世界の潮流を捉えたものとなっているでしょうか。メガトレンドに関連した社会課題を解決し、価値を提供できる事業でしょうか。

(イ)(ア)の長期成長ビジョンを踏まえて、3~5年程度の中期的な事業戦略が問われています。
長期成長ビジョンから事業戦略、そして具体的な補助事業への落とし込みが論理的に繋がっているでしょうか。また、補助事業は事業の有力な柱となり得る成長性の高い事業でしょうか。

(ウ)企業全体を持続的な成長に導く経営体制が問われています。明確な成果目標の設定のもと、企業の透明性、公正性、説明責任を確保するコーポレート・ガバナンスの構築が意識出来ているでしょうか。補助事業による投資は長期成長ビジョン達成につながっているでしょうか。

② 先進性・成長性

(ア) ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析した上で、継続的に自社の優位性が確保できる差別化された計画となっているか(生産工程の抜本的改革や最新設備を導入した物流センター等を通じた高い付加価値・独自性の創出、サプライチェーンや商流の上流・下流部分を自社で構築するなど他社が模倣困難なビジネスモデルの構築、ニッチ分野における独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有している等)。

(イ) 補助事業により、労働生産性の抜本的な向上が図られ、人手不足の状況が改善される取組となっているか(労働生産性の伸び率及び付加価値の増加額が十分に高い取組か。)。

(ウ) 補助事業により提供される製品・サービス等の売上高の持続的な成長が見込まれるか。さらに、その成長率は、補助事業の関連する市場規模全体の伸びを上回るものであるか。

出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金特設サイト「公募要領」(https://seichotoushi-hojo.jp/

<解説>
(ア)補助事業が持続的な競争優位を築ける事業であるかが問われています。高い独自性や品質、模倣困難な差別化、参入障壁の構築など、他社が容易に代替できない競争力を示す必要があります。
上記の競争優位を検討するための方法としては、外部環境から考えるポジショニングと、内部環境から考えるケイパビリティの考え方があります。双方の観点を踏まえて示していくと良いでしょう。

(イ)労働生産性の抜本的な向上が問われます。労働生産性は、本補助金では、付加価値額を従業員数で除したもので判断されます。つまり、従業員1人当たりの付加価値額を増加させる必要があります。省力化投資により、少ない人数や労働時間でも高い付加価値額を達成できる事業となっているでしょうか。

(ウ)市場規模全体の成長以上に、売上高を持続的に成長させられる事業であるかが問われます。市場規模全体の成長を上回るためには、市場シェアをより多く獲得していく必要があります。実効性のある具体的な戦略が描けているでしょうか。

③ 地域への波及効果

(ア) 補助事業により、従業員 1 人あたり給与支給総額、雇用、取引額が申請時点と比べて増加している等、地域への波及効果が見込まれる取組か。特に、投資により創出された利益を賃金として従業員へ還元する賃上げの計画が具体的かつ妥当であり、給与支給総額の増加額が大きく、賃上げ要件の水準を大幅に上回るものとなっているか。

(イ) リーダーシップの発揮により、参加者や地域企業への波及効果、連携による相乗効果が見込まれるか。(主にコンソーシアム形式の場合を想定)

(ウ) 地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長を力強く牽引する事業者、又は、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者との連携・共存共栄を進める事業者であるか。<「地域未来牽引企業」や「パートナーシップ構築宣言登録企業」に対する加点措置>

出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金特設サイト「公募要領」(https://seichotoushi-hojo.jp/

<解説>
(ア)賃上げや雇用、取引先を通じて地域にプラスの波及効果を生み出せる事業であるかが問われています。具体的で実効性のある賃上げ計画の提示が必要です。
また、こうした賃上げは表明だけでなく、実際に一定の水準で達成しなくてはなりません。
賃上げ要件についてはこちらの記事(https://procon-hojyokin.com/chinage_youken/)も参考にしてください。

(イ)自社だけでなく、地域企業や連携先との相乗効果が問われています。
主にコンソーシアム形式の場合を想定した項目ですが、単独申請の場合でも明確に示しておくとより良いでしょう。

(ウ)「地域未来牽引企業」への選定を受けた企業や、「パートナーシップ構築宣言」を行っている企業では加点対象となります。加点要件を満たした上で、事業計画書で明確に示しておくとより良いでしょう。

④ 大規模投資・費用対効果

(ア) 企業の収益規模に応じたリスクをとった大規模成長投資となっているか(事業者全体の売上高における設備投資額の比率が高い水準であるか。)。

(イ) 補助事業として費用対効果が高いか(補助金の交付額に対する付加価値の増加額等)。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。

(ウ) 従前よりも一段上の成長・賃上げを目指す等、企業の行動変容が示されているか。

出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金特設サイト「公募要領」(https://seichotoushi-hojo.jp/

<解説>
「④ 大規模投資・費用対効果(ア)」では、企業の収益規模に比して十分に高い水準の設備投資額であるかが問われています。ただし、不必要な過大な投資を促しているわけではない点に注意が必要です。事業資産(有形・無形)への投資が必要不可欠であるか、それが成長へとつながるかという観点も意識しましょう。

「④ 大規模投資・費用対効果(イ)」は、費用対効果です。つまり、補助金の交付額に比べて、十分に高い効果を発揮する事業であるかが問われます。自社の経営資源や事業との相乗効果を生み、継続的に付加価値を創出するといった投資額以上の効果を発揮する事業であることを示す必要があります。

「④ 大規模投資・費用対効果(ウ)」では、企業姿勢が問われています。補助事業により得られた成長力を原資に、再投資や賃上げを通じてさらなる成長を目指す姿勢を示す必要があります。

⑤ 実現可能性

(ア) 本事業の目的に沿った事業実施のための体制や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。

(イ) 本事業の実施に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。また、金融機関から計画の妥当性の確認を受けているか。<「金融機関による確認書」の提出・確認書を発行した金融機関の担当者等がプレゼンテーション審査に同席した場合に加点措置>

(ウ) 補助事業によって提供される製品・サービスのユーザー、マーケット及びその規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。

出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金特設サイト「公募要領」(https://seichotoushi-hojo.jp/

<解説>
(ア)補助事業を実施する実現性が問われています。実施する大規模成長投資に見合った組織体制、財務状況、資金調達計画が必要です。

(イ)中長期での実行力と事業実現性が問われています。事業化に向けたスケジュールと適切なマイルストーンを置き、実現への道筋を示しましょう。そこで想定される課題とその解決方法を明確に出来ているでしょうか。
また、金融機関から事業計画の妥当性の確認を受けている必要があります。

(ウ)補助事業で対象とする市場規模、市場ニーズが十分にあるかが問われています。市場全体の規模だけでなく、自社が獲得可能性をもつ最大の市場規模、実際にアプローチ出来る顧客の市場規模といった観点も示せるとより良いでしょう。

大規模成長投資補助金の審査基準まとめ

本記事では、補助金の申請が採択されるために意識すべき審査基準を説明しました。多数の項目があり、補助事業を多岐にわたる視点で検証し、不足なく記載しなくてはなりません。審査項目で問われた内容を明確に示せているかは第三者の意見を得ないと意外に気づけないものです。複数の目でチェックすると良いでしょう。

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