昨今の新型コロナウイルスによる影響を打破するため、中小企業を対象に事業モデルの転換を支援する事業再構築補助金事業(令和3年度~)が始まるなど、補助金申請のニーズが高まりつつあります。また、それに伴い補助金申請支援サービスを行う支援機関(コンサルタント)が急激に増え、補助金申請を支援機関に依頼すべきか?また、支援機関に依頼するのであれば、どのような支援機関に依頼すればよいか悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、補助金申請をした経験がない、または新たな補助金にチャレンジするかどうかを検討中の方に向けて、補助金申請時の検討すべき3つのステップと支援機関を選定のポイントをお伝えします。
補助金申請を検討する際は、以下の3つのステップで検討する必要があります。
1.補助金の申請をすべきかどうかを検討する
2.自分で書くか、支援機関に依頼するかを検討する
3.支援機関(コンサルタント)を選定する
各ステップのポイントをご紹介します。
1.補助金の申請をすべきかどうかを検討する
最初に、補助金に申請すべきかどうかを考えます。申請をしない方がよいケースは大きく分けて2つあり、1つ目は、費用(手間)対効果が悪いケース、2つ目は、補助金活用が経営改善に繋がる見込みが不透明なケースです。
①費用対効果が悪いケース
まず費用(手間)対効果が悪いケースについてですが、補助金申請には様々な書類の準備が必要です。例えば、申請時は事業計画書、加点ポイントになる書類や決算書などの必須書類、採択後は相見積書を含む見積書やその他交付決定までに必要な書類、さらに事業計画終了後は実績報告書など、多岐にわたる書類の準備に時間と手間がかかります。また、ほとんどの補助金は、全額が補助されるのではなく、一定の割合(1/3~1/2程度)で自己負担する必要があります。そのため、申請する金額や、補助率、採択率、書類の準備にかかる工数など全体の費用(手間)対効果を考えると、補助金に頼らず自己資金で事業計画を実施した方がよいケースが出てきます。
②経営改善に繋がる見込みが不透明なケース
次に、経営改善に繋がる見込みが不透明なケースですが、例えば、皆さんがものづくり補助金を活用して2,000万円(補助金1,000万、自己資金1,000万円)の機械設備を導入する場合、中長期的にその設備を活用し最低でも自己負担の1,000万円以上の利益を獲得しないと業績は向上(または回復)しません。そのため、事業計画を策定する際に、営業活動や販売促進、新製品開発などにより1,000万円の収益を獲得する見込みを立てる必要があります。さらに、補助金の財源は我々国民の大切な税金ですので、本来は設備購入費用である2,000万円以上の収益の獲得を目指すべき、というのが私の持論です。事業計画を作成してみて、収益を獲得できる見込みが不透明(=経営改善に繋がらない)な場合は、補助金申請が採択され補助金を獲得できたとしても、中長期的には業績が悪化する可能性が高いため、申請を見送った方がよいでしょう。
2.自分で書くか、支援機関に依頼するかを検討する
次に検討する点は、事業計画書を自分で書くのか、コンサルタントや専門家に依頼するかどうかです。分かりやすくかつ根拠性のある事業計画書を自分で書けるのであれば自分で書くことをお勧めします。また、自分で事業計画書の全てを書けなくても、商工会議所などの経営相談サービスを活用する方法もあります。申請書作成の代行まではしてくれませんが、自分で作成した計画書のたたき台を元に添削などのアドバイスを行ってくれますので有効活用すると良いでしょう。東京都では、東京商工会議所の経営相談窓口などでサポート業務を行っています。
よって、コンサルタントに依頼するのは、そのようなサポートがあっても自分で事業計画書を書くことが難しく、作成代行を依頼するケースとなります。
3.依頼する支援機関を選定する
最後に事業計画書の作成代行を依頼するコンサルタントや支援機関を探す場合のポイントです。ビジネスで一般的に確認する契約条件やサポートの流れなどの他にも確認するポイントがあります。
①信憑性のある採択実績が明記されているか
まずは、信憑性のある採択実績が記載されているかどうかを確認します。採択事例の記載が全くない場合は、注意が必要です。なぜなら、採択事例がないか少ない、または採択率が低い可能性があるからです。また、「採択率○○%以上」など、採択率のみの記載も、客観的な数値ではない可能性があり、誇張して記載することできてしまうからです。そのため、採択率の他にも、採択社数や採択事例の概要などが記載されていると、記載内容に信憑性が出てきます。
②“認定支援機関”であることをアピールし過ぎていないか
「認定支援機関である○○社がサポートします。」といった広告文をよく目にしますが、この点だけを主張する支援機関は注意が必要です。認定支援機関とは、「中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(※)」であり、必ずしも補助金申請サポートの実績や丁寧なサポートなどの証明にはなりません。また、一昔前までは認定支援機関の取得のハードルが高かったのですが、最近は一定期間の研修を受けさえすれば、比較的容易に取れるようになりました。
認定支援機関であることのみをアピールしている支援機関は、採択実績などの他のアピールポイントが少ないと捉えることもできます。そのため、認定支援機関以外のアピールポイント(採択実績やサポート範囲)などもしっかり確認するようにしましょう。
(※)ミラサポPlus「中小企業向け補助金・総合支援サイトhttps://mirasapo-plus.go.jp/supporter/certification/ 」より)
③広告・ホームページの印象はどうか
主観的な内容ですが、私の経験上、広告文やホームページ全体の印象や言い回しで受ける第一印象は非常に大切で、問い合わせ後に面談をしてみると多くの場合がその印象通りの結果になります。例えば、「先着何名様○○%オフ」、「△△日までの特別価格」などの数量や期間を限定するなど、心理的に焦らせるようなリスティング広告の場合、初回の面談のその場で契約を迫られたり、言葉足らずの印象を受けるホームページの場合は、面談時に不明点を質問しても回答が曖昧でパッとしない、といった感じです。ご自身が「ここなら安心して任せられる」という印象を受けた支援機関を選定するとよいでしょう。
支援機関を選ぶ時のポイントをご紹介しました。これらポイントを踏まえ、できれば複数の支援機関と面談をして選定することをお勧めします。補助金申請は、多くの中小企業の皆様にとって、今後の事業展開に多大な影響を及ぼす取り組みです。各支援機関の面談での印象やサポート範囲・得意分野などを把握し、皆さまにとって最適な支援機関を選定しましょう。
以上のポイントを押さえ、皆さんの有意義な補助金申請、さらには経営改善に繋げていただければ幸いです。