事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠について
事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠は、2023年度の第10回公募にて新たに追加された枠であり、補助上限が5億円と高額であり、多くの製造業者にとって魅力的な補助金です。このサプライチェーン強靭化枠は、事業再構築補助金の成長枠等とは異なることも多く、個別に公募要領が公開されております。今回は、この事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠の(1)~(4)について説明を行います。
(1)事業再構築補助金のサプライチェーン強靱化枠の概要
(2)サプライチェーン強靱化枠の申請要件
(3)サプライチェーン強靱化枠のスケジュール
(4)サプライチェーン強靱化枠の対象経費
(1)事業再構築補助金のサプライチェーン強靱化枠の概要
サプライチェーン強靭化枠は、海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーン及び地域産業の活性化に取り組む事業者を支援します。対象となる事業者は、製造業のみとなります。
サプライチェーン強靱化枠に応募できる事業再構築の類型は、「国内回帰」のみとなり、以下の3つの要件を事業計画において示す必要があります。ただし、「国内回帰」は、海外の生産拠点を閉じることを要件として認めておらず、海外の生産拠点は現状維持のまま、国内の生産拠点を整備することが可能となります。
新事業売上高10%等要件については、直近の事業年度の決算において、売上高が10億円以上であり、かつ、事業再構築を行う事業部門の売上高が3億円以上である場合には、当該事業部門の売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上でも要件を満たします。
国内回帰の要件を満たす例として、以下の場合は該当します。この事例②のケースのように、自社で海外生産を行っていなくても、取引先の要請があり国内工場を新設すれば対象となります。
<事例①>
・空調機器関連の大企業(取引先)が、部品の国内調達を強化するため、国内事業者(申請者)に増産を要請した。依頼を受けた中堅企業(申請者)が、これまで海外生産していた関連部品について国内回帰(国内生産拠点を強化)し、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上を占める計画を策定している。
<事例②>
・半導体製造装置関連の大企業(取引先)が、海外サプライチェーンを見直し、生産を国内回帰させるため、従来海外の取引先に依頼していた部品について、国内調達に切り替えるため、国内事業者(申請者)に生産を要請した。依頼を受けた中小企業(申請者)が、新たに日本国内に生産拠点を新設し、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上を占める計画を策定している。
(2)サプライチェーン強靱化枠の申請要件
サプライチェーン強靱化枠における補助対象事業の要件概要は、以下の通りです。サプライチェーン強靱化枠は、他の枠よりも厳しい要件が設定され、特に③【付加価値額要件】は、付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加とあり、高い成長性が求められています。
① 事業再構築指針に示す「事業再構築(国内回帰)」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】
② 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)の確認を受けていること【認定支援機関要件】
③ 補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること【付加価値額要件】
④ 取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)【国内増産要請要件】
⑤ 取り組む事業が、過去~今後のいずれか 10 年間で、市場規模が 10%以上拡大する業種・業態に属していること(ただし製造業に限る。)【市場拡大要件】
⑥ 下記の要件をいずれも満たしていること【デジタル要件】
(1) 経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。
(2) IPA が実施する「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行っていること。
⑦ 交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30 円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30 円以上高くなる雇用計画を示すこと。【事業場内最低賃金要件】
⑧ 事業終了後 3~5 年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること【給与総額増加要件】
⑨ 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること【パートナーシップ構築宣言要件】
(3)サプライチェーン強靱化枠のスケジュール
・現在(2023年4月30日時点)、第10回の公募スケジュールは以下の通りです。
公募開始:令和5年3月30日(木)
申請受付:調整中
応募締切:令和5年6月30日(金)18:00
補助金交付候補者の採択発表:令和5年8月下旬~9月上旬頃(予定)
・サプライチェーン強靱化枠の補助事業実施期間は、工場の建設等の投資が予想されることから、交付決定日~28か月以内(ただし、採択発表から30か月後の日まで)と他の枠に比べて長く設定されています。
・サプライチェーン強靭化枠は、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠と同様に事前着手届出制度を利用することができます。事前着手届出を提出し、受理された場合は、2022年12月2日以降の設備の購入契約等が補助対象となります。
(4)サプライチェーン強靱化枠の対象経費
・サプライチェーン強靱化枠の対象経費は、「建物費(建物の建築・改修)」と「機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入等)」のみです。そして、「機械装置・システム構築費」は、【導入設備の先進性要件】を示す必要があるので、必須の対象経費に指定されています。建築費では、「構築物(土地の上に定着した建物以外の土木設備または工作物」」に係る経費は対象になりませんのでご注意ください。
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