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令和7年度の中小企業等の主な補助金について

政府は、令和6年11月29日に「令和6年度補正予算案」を閣議決定し、令和6年12月6日にその概要資料が公開されました。現在、審議が行われており、本補正予算案が決定するのは令和6年12月21日の会期末となります。今回は、本補正予算案から令和7年度の中小企業・小規模事業者等の主な補助金の概要について説明いたします。

◆持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援

令和6年度補正予算案では、物価高や構造的な人手不足等に直面する中小企業・小規模事業者の“稼ぐ力”を強化するため、賃上げ原資を確保して持続的な賃上げを実現することを目的とした補助金が令和7年度も実施される見込みです。今回は、新設される補助金を含め、設備投資がメインとなる4つ補助金の概要について説明いたします。

 

①ものづくり補助金(継続)

中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発に必要な設備投資等を支援するため、令和7年度も継続して「ものづくり補助金」が実施されます。設備投資や取引実態等に合わせ、補助上限・枠・要件見直しなどを実施し、より使い勝手のよい、政策効果の高い支援制度に見直される予定です。予算規模は、生産性革命推進事業(下記参照)3,400億円の一部となる見込みです。

<主な見直し内容>
・最低賃金近傍の事業者に対する支援として、補助率を1/2 → 2/3に引上げ
製品・サービス高付加価値化枠では、従業員区分を見直し、21人以上の中小企業を対象に補助上限を引上げ

生産性革命推進事業
出典:中小企業庁の中小企業対策関連予算より

 

②新事業進出補助金(新設)

中小企業・小規模事業者の成長につながる新事業進出・事業転換を重点的に支援するための新たな支援措置として、「新事業進出補助金」を創設予定です。予算規模は、既存基金を活用し、1500億円規模となる見込みです。

この補助金は、新事業新進出と事業転換を支援する目的であることから、事業再構築補助金の後継としての位置づけと思われます。事業再構築補助金の第13回公募については、採択者数などの予算消化の状況から、あと1回はあると予想していました。しかし、新事業進出補助金の創設により、事業再構築補助金で活用されていない既存基金1500億円の予算をあてられると考えられます。

本補助金は、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(新規性)や生産性向上による賃上げが要件として挙げられており、新市場進出という積極的な成長を検討している企業にとっては、積極的に活用したい補助金となるでしょう。

・要件 :企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦(新規性)や賃金要件等
・補助対象経費:建物費・機械装置費・システム構築費・技術導入費・専門家経費 等

新事業進出補助金
出典:中小機構HP「「中小企業新事業進出促進事業」

③中小企業成長加速化補助金(新設)

意欲ある中小企業・小規模事業者の飛躍的成長を実現するため、売上高100億円を目指す中小企業等への設備投資や中小機構による多様な経営課題(M&A・海外展開・人材育成等)への支援として「中小企業成長加速化補助金」を創設予定です。予算規模は、生産性革命推進事業:3,400億円の一部となる見込みです。

経産省によると売上高100億円以上の企業は、現在4,500社程度であり、海外投資を拡大してきた大企業と異なり、外需のほか内需も意欲的に取り込み、生産性の向上で賃上げも実現し、地域経済の好循環を先導しています。このように意欲的な中小企業を増やすための支援を行うことで、「国内」での投資が拡大し、持続的に賃金が引き上がる効果が引き出されることが期待されています。

・要件 :売上100億円を目指すビジョン・潜在力、賃金要件 等
・補助対象経費:建物費・機械装置費・ソフトウェア費・外注費・専門家経費への支援等を創設

 

④大規模成長投資補助金(継続)

人手不足に対応するための省力化等による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るために行う工場等の拠点新設や大規模な設備投資に対して補助が行われます。予算の規模は1,400億円、国庫債務負担行為を含めると総額3,000億円となる見込みです。

この補助金は、令和6年度から開始された補助金であり、令和7年度も継続して実施されることになります。この補助金の目的は、労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を行うためであり、工場などの新設や大規模な生産設備等の導入を検討している中堅・中小企業が対象となります。補助金額は、前回と同様ならば最大で50億円となります。

令和6年度の採択者(1次公募・2次公募)の各種指標(売上高成長率、労働生産性の伸び、付加価値増加額、賃上げ率等)の中央値を確認すると、高い目標水準の事業が採択となっております。この補助金は、より投資効果が大きい事業が採択される傾向にあるので、令和7年度に新規工場の新設、大規模な設備投資等を検討されている企業は、この目標水準を参考に早めに準備されることお勧めいたします。
(参考)
1次公募における各種指標の中央値(採択者、申請者全体)
2次公募における各種指標の中央値(採択者、申請者全体)

大規模成長投資補助金
出典:中小企業庁の中小企業対策関連予算より

 

まとめ

今回は、本補正予算案から令和7年度の中小企業・小規模事業者等の主な補助金の概要について紹介しました。まだ、補正予算が成立しておらず、詳細内容が不明な補助金が多いですが、この概要を参考にしていいただき、早めに準備を進められることをお勧めします。自社だけで申請書を作成することができれば一番ですが、必要に応じて当社のようなコンサルタントにサポートを依頼することもご検討ください。

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