
2025年4月22日より、中小企業・小規模事業者の新規事業展開を支援する「中小企業新事業進出促進補助金」(以下「新事業進出促進補助金」)の第1回公募が開始されました。本補助金は、従来の「事業再構築補助金」の後継制度として設けられ、新しい事業や高付加価値事業へ進出する際の設備投資等を支援するものとして、2025年度よりスタートします。この記事では、これから新事業進出促進補助金の申請を検討されている方に向けて、その概要や特徴についてお伝えいたします。
<目次> 1.新事業進出促進補助金の概要 2.事業再構築補助金との違いについて 3.新事業進出促進補助金のスケジュール 4.補助対象者、補助対象外の事業者 5.補助対象経費について 6.補助対象事業の要件 7.新規事業の新市場性・高付加価値性 8.審査基準 9.申請書類 10.まとめ 11.「プロコン補助金.com」の紹介 |
新事業進出促進補助金とは、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを支援する補助金です。
新事業進出促進補助金の概要は、以下の通りです。補助金の上限額は9,000万円、下限額は750万円、補助率は1/2であり、ものづくり補助金と比べると大規模な投資が対象となります。
(出典: 中小企業庁の公式サイトより抜粋)
新事業進出促進補助金は、中小企業等が高い成長性を見据え、大規模かつ高付加価値な新規事業への本格的な設備投資を後押しする制度です。補助下限額を750万円に設定し、一定規模以上の投資を条件とすることで、持続可能な事業拡大を支援します。
一方、事業再構築補助金は、コロナ禍からの迅速な事業回復や転換を目的に、100万円からの小規模投資にも柔軟に対応し、補助率は最大3/4と高く、申請企業の自己負担軽減に資する制度でした。以下に、両補助金の主な比較項目を示します。
項目 | 新事業進出補助金(新) | 事業再構築補助金(旧) |
---|---|---|
目的 | 新事業進出・高付加価値事業への投資支援 | 事業再構築(新分野展開・転換等)支援 |
補助上限額 | 最大9,000万円(特例適用時) | 最大1.5億円(枠による) |
補助下限額 | 750万円 | 100万円 |
補助率 | 1/2 | 1/2~3/4(枠や条件による) |
対象となる投資規模 | 比較的大規模な投資 | 小規模投資も可 |
主な導入背景 | 恒常的な中小企業支援 | コロナ禍の緊急支援 |
公募回数 | 2026年度末までに4回程度 | 13回。年数回(回数は年度で異なる) |
収益納付 | なし(※ただし要件未達で返還あり) | あり |
新事業進出促進補助金の事業実施期間は、交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内) です。補助を受ける設備等の発注から納入、入金までをこの期間内に完了させる必要があります。第1回公募は以下のスケジュールとなります。
・公募開始:令和7年4月22日(火)
・申請受付:令和7年6月頃(予定)
・応募締切:令和7年7月10日(木)18:00
・補助金交付候補者の採択発表:令和7年10月頃(予定)
全体のスケジュールは、下図の通り「応募申請~事業化状況報告」となります。なお、交付決定日より前に補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注)等した経費は、補助対象になりませんので、ご注意ください。
(出典: 中小企業庁の公式サイトより抜粋)
<補助対象者>
新事業進出促進補助金の補助対象者は、日本国内に本社及び補助事業実施場所を有する以下の中小企業者となります。また、一般財団法人及び一般社団法人については、非営利型法人に該当しないものが対象となります。
(出典: 新事業進出促進補助金の公募要領より抜粋)
<補助対象外の事業者>
上記の補助対象者であっても、以下に該当する事業者は、補助対象外となりますので、ご注意ください。
・本補助金の申請締切日から16か月以内に「新事業進出補助金」、「再構築補助金」、「ものづくり補助金」に採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)、補助事業実施中の事業者
・事業再構築補助金において、採択の取消を受けた事業者、交付決定の取消を受けている事業者
・応募申請時点で従業員数が0名の事業者
( 中小企業等の新規事業への進出を通した企業規模の拡大や賃上げを事業の目的とすることから、従業員が0名の事業者は対象となりません)
・新規設立・創業後1年に満たない事業者
(中小企業等の新規事業への進出を事業の目的とすることから、創業間もない事業者は対象となりません)
新事業進出促進補助金の対象経費は、以下の9つの経費となります。
補助対象経費には、補助事業の事業化に事業資産(有形・無形)が必要不可欠であり、「①機械装置・システム構築費」又は「②建物費」のいずれかが必ず補助対象経費に含まれてなければなりません。
また、一過性の支出(広告宣伝・販売促進費等)が補助対象経費の大半を占める場合には、本補助金の支援対象にはなりませんので、ご注意ください。
<補助対象経費>
費目項目 | 内容 |
①機械装置・ システム構築費 | 機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費。専用ソフトウェア・情報システム等の購入、構築、借用に要する経費 |
②建物費 | 生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、作業場、その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費 |
③運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
④技術導入費 | 知的財産権等の導入に要する経費 |
⑤知的財産権等関連経費 | 特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
⑥外注費 | 検査等・加工や設計等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費(補助上限額:補助金額全体の10%) |
⑦専門家経費 | 専門家に支払われる経費(補助上限額:100万円 ) |
⑧クラウドサービス利用費 | クラウドサービスやWEBプラットフォーム等の経費 |
⑨広告宣伝・販売促進費 | 広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、補助事業のPR等に係るウェブサイトの構築、展示会出展、ブランディング・プロモーションに係る経費(補助上限額:事業計画期間1年あたりの売上高見込み額(税抜き)の5%) |
※ (①又は②は必須)
新事業進出要件は、以下の3つの要件を全てクリアする必要があります。新事業進出の定義(詳細)は、「新事業進出指針の手引き」にてご確認ください。
① 製品等の新規性要件~中小企業等にとって、事業により製造等する製品等は、新規性を有するもの。過去に製造した製品等を再製造する場合は、要件を満たしません。
② 市場の新規性要件~中小企業等にとって、事業により製造等する製品等の属する市場は、新たな市場であること。新たな市場とは、既存事業にて対象ではなかったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層を対象とする市場を指す。
③ 新事業売上高要件~ 以下の要件のいずれかを満たすこと。
(ⅰ)事業計画期間終了後、新たに製造等する製品等の売上高又は付加価値額が、応募申請時の総売上高の10%又は総付加価値額の15%を占めることが見込まれるもの。
(ⅱ)応募申請時の直近の事業年度の売上高が10億円以上であり、かつ、同事業年度の決売上高のうち、新事業進出を行う事業部門の売上高が3億円以上である場合には、事業計画期間終了後、新たに製造する製品等の売上高又は付加価値額が、応募申請時の当該事業部門の売上高の10%又は付加価値額の15%以上を占めることが見込まれるもの。
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額(又は従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率が4.0%以上増加すること 。
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うこと。
①一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させること
②給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加させること
毎年、事業所内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること。
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を、応募申請時までに仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト「両立支援のひろば」にて公表していること 。
補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること。
書類審査は、「(1)補助対象事業としての適格性」~「(9)減点項目」がありますが、審査項目に「(2)新規事業の新市場性・高付加価値性」があるのが、この補助金の特徴です。この新市場性、または高付加価値性のどちらか一方を満たすことを、事業計画書内で明記することが必要となります。
「新規事業の新市場性・高付加価値性」は、公募要領に記載の以下の基準に基づき審査されます。
(出典: 新事業進出促進補助金の「新事業・高付加価値事業とは」より抜粋)
「新規事業の新市場性・高付加価値性」では、補助事業で取り組む新規事業の「新市場性」及び「高付加価値性」について審査されます。以下は、イメージ図です。新市場性、または高付加価値性のどちらかの要件をクリアする必要があります。
(出典: 新事業進出促進補助金の「新事業・高付加価値事業とは」より抜粋)
補助事業の内容が、新事業進出指針に基づく当該事業者にとっての新規事業であることを前提に、社会においても一定程度新規性を有する(一般的な普及度や認知度が低い)ものが求められます。例えば、一定程度新規性を有する市場とは、技術・サービスとしてすでに存在はするものの、一般消費者や企業における普及率が低く、認知度も限られているため「まだ当たり前ではない」領域を指すと思われます。これらの市場は、参入障壁が高く、競争相手も少ない反面、成功すれば大きな成長が見込める領域といえますが、かなり限定した市場となります。
また、新市場性では、新規事業により製造する新製品等のジャンル・分野を特定する必要があります。ジャンル・分野を区分する際には、製品等の「性能」「サイズ」「素材」「価格帯」「地域性」「業態」「顧客層」「効果」等の要素を排除する必要があります。以下は、区分の例です。
(出典: 新事業進出促進補助金の「新事業・高付加価値事業とは」より抜粋)
補助事業の内容が、同一のジャンル・分野の中で、高水準の高付加価値化を図るものであるかを示す必要があります。
新製品等のジャンル・分野における一般的な付加価値や相場価格と比較して、自社が製造等する新製品等が、高水準の高付加価値化を図るもの、または高付加価値化の源泉となる価値・強みの分析が妥当なものであるかを説明する必要があります。以下は、高付加価値化・高価格化の例です。
(出典: 新事業進出促進補助金の「新事業・高付加価値事業とは」より抜粋)
新事業進出促進補助金では、9つの審査項目があり、前述した「(2)新規事業の新市場性・高付加価値性」以外の主な項目の審査基準をお伝えします。
審査項目 | 内容 |
(1)補助対象事業としての適格性 | ①補助対象者、補助対象事業の要件、補助対象事業等を満たすか。
②補助事業により高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか。 |
(3)新規事業の有望度 | ①新規事業が、自社がアプローチ可能な範囲の中で、継続的に売上・利益を確保できるだけの市場規模か。成長が見込まれる市場か。
②新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか。 ③競合分析を実施した上で、顧客ニーズを基に、競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。 |
(4)事業の実現可能性 | ①事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。
②最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。 ③補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか。第三者に過度に依存している事業ではないか。過度な多角化を行っているなど経営資源の確保が困難な状態となっていないか。 |
(5)公的補助の必要性 | ①川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を生み出す事業など、国が補助する積極的な理由がある事業はより高く評価。
②補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性、事業の継続可能性等)が高いか。 ③先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。 ④国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか。 |
(6)政策面 | ①経済社会の変化(関税による各産業への影響等を含む)に伴い、今後より市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野に進出することを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。
②先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国の経済成長・イノベーションを牽引し得るか。 ③ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。 ④地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、大規模な雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。 |
新事業進出促進補助金にて、電子申請時に添付する必須書類、及び金融機関から資金提供を受け場合の書類は、以下となります。
<必須書類> |
① 決算書(直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表) |
② 従業員数を示す書類(労働基準法に基づく労働者名簿の写し) |
③ 収益事業を行っていることを説明する書類 ・法人の場合:直近の確定申告書別表一及び法人事業概況説明書の控え ・個人事業主の場合:直近の確定申告書第一表及び所得税青色申告決算書の控え |
④ 固定資産台帳 |
⑤ 賃上げ計画の表明書 |
<金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合のみ> |
⑥ 金融機関による確認書 |
今回は、新設された「新市場進出促進補助金」の概要や特徴についてお伝えしました。この補助金を申請するには、いくつかの要件をクリアする必要がありますので、上記の概要だけではなく公募要領や補足資料を必ず確認してください。本記事が新市場進出促進補助金への申請をご検討されている皆さまの参考になれば幸いです。
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以下の表は、当社がサポートし採択された、事業再構築補助金の事業再構築(概要)と業種の一例です。
事業再構築(概要) | 業種 |
事業再編(業種転換)「リフォーム業 → ITプラットフォーム事業」 補助金額 6,000万円 | 東京都 建設業 |
新分野展開 「鉄鋼業界 → 化学業界」 補助金額 4,800万円 |
東京都 中小製造業 |
新分野展開 「物流サービス業 → カフェベーカリー事業」 補助金額 6,000万円 |
静岡県 物流業 |
新分野展開 「内装業 → 教育及びコーワーキングスペース業」 補助金額 2,000万円 | 北海道 建築業 |
新分野展開「弁護士業 → ITプラットフォーム事業)」 補助金額 1,000円 |
神奈川県 弁護士業 |
新分野展開 「不動産仲介 → リノベーション事業」 補助金額 1,000万円 |
兵庫県 不動産仲介業 |
新分野展開 「求人あっせん業 → 予約管理と売上管理の連動システム事業」 補助金額 2,200万円 | 東京都 職業紹介事業 |
新分野展開 「カイロプラクティック事業 → シミュレーションゴルフ事業」 補助金額 1,400万円 | 東京都・神奈川県 医療・介護事業 |
新分野展開 「総合金属加工業 → シーシャ(水たばこ)事業」 補助金額 2,000万円 | 神奈川県 製造業 |
新分野展開 「会計の記帳代行業 → マッチングサービス事業」 補助金額 1,500万円 | 東京都 専門サービス業(税理士事務所) |
新分野展開 「人材派遣業・人材紹介業 → 短期雇用マッチング事業」 補助金額 1,000万円 | 東京都 職業紹介業 |
新分野展開 「整骨院 → 顧客管理システム販売事業」 補助金額 1,000万円 | 東京都 医療・介護事業 |
新分野展開(グローバル) 「受託ソフトウェア事業 → 公共サービス提供事業」 補助金額 4,000万円 | 東京都 受託ソフトウェア事業 |
事業再構築補助金を始めとした様々な補助金サポートの採択実績は90%超。また、単にサポートした補助金の採択率が高いだけでなく、難易度が高い補助金や申請枠の採択実績が豊富なことも特徴です。
<採択実績のある難易度の高い補助事業名と申請枠>
ものづくり補助金(グローバル展開枠)、事業再構築補助金(サプライチェーン強靭化枠)、躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(競争力強化枠)、設備投資緊急支援事業、明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業]
プロコン補助金.comの共同代表である徳田、川崎をはじめ、当グループに所属しているコンサルタントは全員、経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士を保有しており、補助金コンサルの経験も豊富です。そのようなトップコンサルタントが、事業計画書の作成(代筆)、提出書類の準備、加点ポイントの取得、電子申請までをトータルサポートします。採択時は交付決定までを責任を持ってサポート致します。